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Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.33 )
日時: 2010/01/28 20:08
名前: 白魔女 (ID: tPOVEwcZ)



六話——懐かしき思い出。そして深い闇

  
 そしてその会議は終わった。

 メイサはまたいつものように、いつの間にか消え、セシルもまた、修行と言ってどこかへいってしまった。リンはルリと居るのが耐えられなくなったのか別のテーブルへ行き、セレサはまたスイーツを食べに行くと、どこかへ行ってしまった。

 ようするに、残ったのはアリスとルリと、あの魔女達の中で一番普通のソラだった。

「懐かしかったなぁ。あの六人で一緒に居たのは」

 ソラが、独り言のように呟いた。

「え、今までのサバトでも、会わなかったの?」

「うん。メイサが出てくることはほとんどなかったし、セシルもこの前まで山で修行してて。あの六人で集まったのは、久々だったよ」

「そうだったの……」

 ソラはグラスの中にあった飲み物を一口飲んだ。

「でも、今日アリスがみんなを集めてくれて、よかったよ」

 ソラがニコッとアリスに笑いかけるが、アリスはため息をついた。

「本当はこのまま、みんなを合わせないほうがよかったのかもしれない……みんな、“あの魔女団”のこと、思い出しちゃって……」

「あぁ……『トンガリ帽子』のこと」

 ソラがそっけなく言うが、アリスが慌てた。

「ソラ!そのことは他の魔女や悪魔には、言っちゃ——」

「わかってるよ。わかってるけどさ。なんで、こんなビクビクしなくちゃならないの……かなって思って……」

 ソラが言う事にも一理ある。が、アリスは首を横に振った。

「でも、それでもバレちゃいけないことなんだよ」

「うん……でも、セレサが言いそびれてたことがあるじゃん?ティアル……」

「あぁ……ティアル……」

 二人はどこか遠くを眺めるように、その名を呼んだ。

「次は……いつ帰ってくるのかな」

 ソラがまた、独り言のように呟く。

「それにしても、なんでルリちゃんが赤い瞳になんか?」

「さあ。あたしが知ってるはずないじゃないか。そういえば……」

 アリスはポケットから、あの魔法石を取り出した。黒光りした、小さな石。

「……!?魔法石!?なんでそんなもの、アリスが」

「ルリを狙っていた盗賊が、持っていた。盗賊は、森を歩いていたヤツから盗んだと言っていたがな」

「そんな!魔法石は魔女や悪魔しか持っていないはず。それに、これを人間が長時間盛っていたら、人間は魔法石に食われてしまうはず」

「そうなんだよね。でも、確かにこれは今、あたしの手の中にある。もしかしたら、闇市で出回っているのかも……」

「闇市で!」

 ソラは顔を真っ青にさせた。そんな事があったら、恐ろしい事になる。

「それか……盗賊が盗んだって言うその人間が、もしくは——」

「魔女?わざと、盗賊に渡したの?」

「考えられなくもない。そして、これは一番考えたくないが——」

 アリスは言おうか迷ったが、ソラに話した。

「その魔女の狙いはあたしだ」

「そんなっ!!」

 ソラが、まさかというように飛びのく。

「意図的にその魔女が盗賊に魔法石を渡したんなら、理由がない。あるとすれば、あたしを狙ってるって事。あの盗賊は元々あたしの家の近くの森に居座っていたから、その魔女があたしの家を知ってるんなら、この魔法石があたしの元へ届く事も、予想できたかもしれない。現に、魔法石は私の元へ来た」

「でも、なんでアリスが……。一体そいつは誰……」

 言った後に、ソラがはっとした。

「ルリちゃんの件と言い、まさか……」

「ああ。たぶん、そのまさかだ」

 ソラの顔は、恐ろしいといわんばかりに顔を青ざめた。

「——“紅い魔女”が、動き始めた——」