ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.77 )
日時: 2010/04/07 19:10
名前: 白魔女 (ID: tVOKPYTM)



十三話——黒魔術師の最後


 精霊が消えると、アリスは力尽きたようにぐったりとした。

 すると、いきなりキーツが叫んだ。

「うわあぁぁぁぁ!貴様、よくも————っ!!」

 キーツは狂ったように剣を振り回し、アリスに襲い掛かった。アリスは避ける事もできずに、ただキーツ
を見る。

 キーツはアリスを前に立ち、剣を振り上げた。もうアリスはこれまでか、と思った。が、その時だ。

「ダ、メェェェェェェ—————っ!!」

 縄を解かれていたルリが、絶叫した。見ると、ルリの瞳が紅く輝いている。そして、パアッとその紅い光が部屋を包み、紅い光が当たった魔法陣がことごとく消えていった。

「ぼ、僕の魔法陣がっ……」

 キーツはガックリとうなだれ、膝を突いた。光りがなくなる頃には、館内の魔法陣すべてが消え失せ、アリスの腕に刺さっていた剣も、セレサをリンの体に巻きついていたツタも、消えていた。剣が消えたためにズルズルっと、アリスは床にへたり込んだ。

「紅い瞳は、僕の夢だったんだ……紅い瞳さえあれば、黒魔術なんて使わなくてよかった……」

 キーツの腕には、血でしたためられた刻印がある。黒魔術師の刻印だ。

「なのに、貴様はそれを!」

 キーツが再び刃をアリスに向けた。が、次は自由になったセレサたちがそれを食い止めた。

「魔法陣さえなくなれば、こっちのものよ!」

 リンはそう叫ぶと、足で床をコン、と叩いた。すると、そこからキーツに向かって水がなだれ込む。

「まだまだぁ!」

 セレサがその水に呪文をかけると、いないはずのサメが出現した。

「う、うわぁぁ!や、やめてくれぇ!」

 居もしないサメを追い払いながら、キーツが叫ぶ。

「さぁて、とどめだよ!」

 セレサとリンが、手を繋ぎ、その手をキーツに向けた。

「連合魔法! “風林火山”!!」

 そして、手から光が放たれる。その光りは、人の形を成し、キーツに向かった.風の様にすばやく、林のように静止して、火のように攻撃した。そしてキーツが抵抗しようものなら、山のように防御した。

「これで男は死ぬはず……あれ!?」

 セレサとリンは驚いた。キーツはまだ生きていたのだ。キーツ自身も不思議そうにしていたが、立ち上がり、高笑いする。

「ふはははははは!僕は不死身なんだ!」

「そ、そんなバカな……」

 セレサもリンも、愕然とした。が、クロスだけは冷静を保っていた。

 すると、先ほど精霊が開かせた、あの穴が、キーツの真下に開いたのだ。

「な、なんだこれは!」

 キーツが慌てふためくが、クロスがふっと笑った。

「黒魔術師は、死ぬ事はない……死ぬ=地獄だからな!」

 クロスが言い放つとともに、さっきの闇の使者が、ぬっと、キーツの後ろに姿を現した。闇の使者は、ポン、とキーツの肩に手を置く。

「ま、まさか……嘘だろ!?」

「そんな事も知らずに黒魔術を使っていたなんて……呆れるな?」

 クロスの言葉を聞いて、キーツは顔を真っ青にさせた。そして、闇の使者が耳まで裂けた口で、ニタリと笑う。

「契約……完了……」

 そして、キーツは絶叫品がら地獄へと落ちていった。