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Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.80 )
日時: 2010/07/03 01:19
名前: 白魔女 (ID: bEKYC/sm)



十四話——アリスの血


「アリス!!」

 キーツがいなくなって、一同は静止していたが、ルリが真っ先にアリスの元へ駆け寄った。

「アリス、大丈夫!? ち、血がっ……」

 ルリは無残なアリスの姿を見て、愕然とした。出血がひどく、アリスの顔は血の気も全くない。

「馬鹿なヤツだ……あの魔術は危険だと、前にも言ったはずだ」

 クロスが体を引きずりながら、アリスに寄る。

「あの精霊は、一体何なの?」

「あれは、“白の精霊”。そのままだがな……かなり強力な精霊であるぶん、呼び出すためにはかなりの血を必要とする。だから危険だと言ったのに!」

 クロスが怒ると、アリスが力なく笑った。

「へへっ……結構な量の血、持ってかれたよ……」

「……ったく!」

 クロスがぷいっとそっぽを向くが、横目でアリスを心配そうに見ていた。

「アリス、本当に大丈夫なのぉ!? なんなら、あたしが手当てするしっ……」

「何のための“紅い瞳”さ……」

 アリスが自分の目に手をかざす。すると、アリスの目は紅い光を放っていた。

 その状態で、アリスは自分の腕に手をかざした。すると紅い光を放って、骨まで見えていた腕が、どんどん修復されていった。蒼白だった顔にも、血の気が出てくる。

「ふぅ……」

 すべてをやり終えると、アリスは一息ついた。ルリが安心して、アリスに抱きつく。

「死んじゃうかと思った——っ!」

「うあっ、わ、わかったから耳元で叫ばないでっ」

「うわぁぁぁ————ん!!」

 大声で泣くルリに、アリスはうんざりしつつも無事でよかったと思った。

 ただ、アリスの“安心”の中に、ポッカリと穴が開いていた。

(魔法陣をすべて消し去るなんて、とてつもない魔力を要するはずなのに……紅い瞳のせいだけなのかしら。それとも、ルリ自身が——)

「アリス?帰ろうよ?」

 ルリの言葉にハッとしたアリスは、にこやかに答えた。

「うん……家に帰ろうか……」