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Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.88 )
日時: 2010/07/27 22:05
名前: 白魔女 (ID: PwsOoYFR)



「ん……?」

 どれくらい寝ていたのだろう。アリスはベッドから起き上がろうとしたが、ズキッと体中が痛むので、やめた。

 何か、店のほうで音がする。アリスは本能的に嫌な予感がした。寝たままの状態で、ドアの隙間から店を見る。

 ルリが、店の薬を漁って、何か作っていた。なんだろう、とアリスは思い、声を張り上げる。

「ルリ!? 何やってるの?」

「あ、アリス」

 ルリは、台所に行き、そして何やら怪しい“モノ”を持って、部屋に来た。

「あのね、ルリがね、一人で作ったの」

 ルリが褒めて褒めてと言わんばかりの笑顔を見せるが、手に持っている“モノ”は、この世のものとは思えないものだった。少なくとも、食べ物とは思いたくない。

 凄まじい悪臭を放つその“モノ”を、アリスは鼻をつまみながら覗き込んだ。「うっ」と、小さく呻く。

「これ……何?」

「アリスのために作ったの。ルリが、一人でだよ。セレサお姉さんが、「まりょくをたかめるくすり」って言ってた」

「薬……これ、食べるの?」

「うん、もちろん。アリスが食べるんだよ」

 アリスはため息をついた。セレサのヤツが、いらんことをしよって。ルリにあの薬が作れるわけないし、作ったってこの様だ。どう食べれと言うのだ?

 しかし、心優しいアリスは、そんなこと口が裂けても言わず、なんとかルリを傷つけないようにしながら、薬を飲まずにすむ方法を考えた。アリスだって、正直こんな“モノ”、食べたくなかったのだ。

 そうこうしていると、タイミングの悪い事に、クロスがやってきた。

「なんだこの悪臭。鼻がひんまがりそう……」

 アリスがクロスの首根っこを引っつかんで、にらんだ。

「な・に・か?」

「いや、だって、こんな“汚物”、食べたら死ぬぜ?」

 あぁ——言ってしまった。アリスはそうは思ったが、内心少し安心した。これでよかったのだ。ハッキリ言えば。

 しかし、そう思ったのもつかの間。ルリは、目いっぱいに涙をためて、鼻声で言った。

「そ、そんな……汚物だ、なんて……ルリ、頑張って、アリスのために、つ、つくっ、作ったのに……」

 ルリはとうとうしゃがみこんで、大泣きしてしまった。

 仕方ない。アリスはそう思い、覚悟を決めた。

「ルリ、泣かないで。あたし、食べるから」

「えっ」

「えぇっ!?」

 ルリもクロスも驚く中で、アリスはその“モノ”の入ったコップを、口につけ、がぶ飲みした。

「——っマッズゥゥゥゥーい——!!」