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Re: 呪われた瞳と愉快な魔女達 ( No.9 )
日時: 2010/01/06 22:06
名前: 白魔女 (ID: GEbzXJEw)

二話——悲しげな少女


「お願いですっ、お願いですんで魔女にしてください〜!」

「だから無理なんだって〜」

 アリスがどう言っても、少女は諦めなかった。頭を切り落とすぞ、内臓を取り出そうか、なんて脅したって、少女は諦めなかった。

(こりゃ、帰りそうにないな……仕方あるまい、奥の手を使うか)

「お嬢ちゃん、こっちおいで」

 アリスはいつになく優しい笑みで少女を近づけた。少女は弟子にしてくれるのか、と期待を込めてアリスの元へ寄る。

 アリスは、優しく少女の額を人差し指でつく。

「キャアァ!」

 少女は悲鳴をあげた。自分の身に何が起きたのかわからずに立ってみると、お店の外だった。ドアを叩くが、開かない。

 中でドアを叩く音を聞いていたアリスは、またため息をついた。少々乱暴だが、こうするしかなかったのだ。人差し指で触った瞬間に魔力の弾を少女の額に発射し、体は自然と後ろ向きに倒れこむ。その時にまた弾を発射し、店の外に出す。

 でも、この技は結構危ない。あと少し、弾の威力が大きかったら、少女の頭は吹っ飛んでいたろう。

 ドアの叩く音が止んだ。ついに諦めたのだろう。アリスは閉めていた鍵をそっと開けた。隙間から、外を見る。見るからにしょげている少女が、とぼとぼと村に行くのが見えた。

(ゴメンよ……)

 心の中で呟いていると、戸が小さく開き、黒猫が入ってきた。

「なんだ、あの娘は。この世の終わり、みたいな顔してたが。客だったのか?」

 黒猫はアリスに向かって話した。といっても口は動かしていないが。

「あぁ、クロス、おかえり。特になんでもないよ」

「ふぅん。ならいいけど」

 クロスと呼ばれた黒猫は、部屋の隅にあるタオルに包まって、居心地の良さそうに丸まった。

「チラッとだけ見えたんだけど、あの娘……紅い瞳をしていなかったか?」

 アリスは間を置いて答えた。

「気のせいさ」