ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 異世界戦争 ( No.3 )
- 日時: 2010/01/09 15:34
- 名前: 殊葉 ◆//Muo9c4XE (ID: DrxGkANi)
prologue
2149年、12月18日。デヘレンスには粉雪が舞っていた。
とても寒い。マフラーや上着をみにつけなきゃ、凍え死んでしまうぐらい寒い。デヘレンスで、過去にこんなことってあったのかな?
コンデノーラも、セルシリーノも閉まっている。武器や防具が買えない、といって帰っていく兵士も多い。
僕はふと足を止めた。そして、耳からイヤホンをそっと外す。軽快な音楽が、一瞬で止む。
菫色のマフラーをした女の人の後ろ姿が、僕の視界にいる。
お母さん……。
いるはずのない人が、目の前にいるような気がした。
いつもお母さんは、冬になると菫色の毛糸のマフラーをして、微笑んでいた。そして、優しくしてくれた。時には怒ったりもするけど、すぐに笑う。それが僕のお母さん。
まさか……本当にお母さんなのか?
僕は、菫色のマフラーをした女性に近づいていった。
栗色のロングヘアー、立っている姿……お母さんとそっくりだ。本当にお母さんがいるのか? 僕の目の前にいるのか? 信じられない。
そっと、そっと近づく。女性と僕の差が縮まるにつれて、ラベンダーの香りがしてきた。
「あのぉ……」
僕は女性に声をかけた。
女性は「はい?」と言いながら、振り向く。
「あ、なあんだ。圭都君かあ〜」
「も、紅葉……? 紅葉、なの……?」
僕は少し慌てた。
まさか、紅葉だったなんて……!
でも、間違えるのも可笑しくない。紅葉は僕のお母さんに、昔から似ていたのだ。紅葉の後ろ姿を見ると、お母さんなのか紅葉なのか、全く分からない。
「そうだよ、紅葉だよ! で、圭都君はここで何してるの?」
満面の笑顔で、紅葉は僕を見てる。
「えーっと……散歩……かな」
僕は少し首を傾げて言った。
「そうなんだ……。実はあたしも! あ、そうだ! あたしの家においでよ ! クーラーもあるしさ!」
紅葉は兎みたいに飛び跳ねた。
「うん、いいよ」
僕は優しく笑った。
prologue end