ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —バグ、消去します— ( No.23 )
- 日時: 2009/07/24 19:44
- 名前: 空雲 海 (ID: JvL4RDTQ)
「それは——」
「雨雲。話を進める前に、登場人物が一人抜けてる。」
曇先輩が雨雲先輩をさえぎって言う。
「おっと! そうだった……。」
そして、間をあけて続ける。
「もう一人、この事件にはいたのよ。」
「事件? なんで事件になってるの?」
「もう立派な事件よ。」
そういって、ニコリともしない雨雲先輩。
事件って……。
「佐藤先生と斎藤先生はお金で賭けをしていたのよ。」
「賭け?」
「そう——。それも、生徒の点数でね。」
「えっ!?」
わたしは雨雲先輩の言葉で絶句する。
賭け……。
「佐藤先生は、多額のお金をあなたに懸けていたのよ。だから、あなたの点数が下がると、 急に態度が変わったり、暴力を振るうようになった。自分の懸けていたお金が、無くなったんだもん。」
雨雲先輩がゆっくりと言う。
その言葉は、わたしに重みとしてのっかかる。
「だけど、あなたは本当なら1位になってるはずだった。それを邪魔したのが斎藤先生。 もう、これ以上自分のお金がなくなるのを阻止しようとして、あなたに偽りの点数を返した。 斎藤先生は、今頃微笑んでいるでしょうね……。」
雨雲先輩が言い終わる。
「…………。」
わたしは、しばらく物を言えなかった……。
わたしの点数で賭けをしていたなんて……。そんな重大なことを、わたしの点数で……。
「こんなこと……犯罪よ。」
「えっ!」
わたしの頭の中に犯罪の言葉が飛び交う。
「しかも、教職員。こんなのバレたらただじゃおかないでしょうね。学校を辞めさせられるか ……悪い場合は教職自体を辞めさせられるか……。」
「…………。」
口をポカーンッとするわたし。
「こんなこと……バレないと思ってるのね……あいつら……。」
雨雲先輩が悲しそうに言う。
「バレないと思ってるからやってるんだろ。じゃないと……やらない。」
机やいすを積み上げた所で寝ている空雷先輩が言う。
「いつか嘘はバレる……なのに、やるなんて……バカだ。」
デスクに手を組んだ上にあごを乗せている曇先輩が言う。
みんな……こんなこと、起こってほしくないんだ……。
……沈黙がこの場を支配する。
「このままで終わりたくない……。」
この沈黙を破ったのは曇先輩だ。
「柳川 海晴。」
「えっ!?」
どうしてわたしの名を……。
「バグをデリートする。柳川の許可が必要だ。」
曇先輩が言う。
「…………。」
言っていることがのみこめないわたし。
「わたしたちの部は、電脳探偵部。部活動内容は……バグをデリートすること。斎藤と佐藤 をデリートする。それにはあなたの許可が必要よ。」
雨雲先輩が言う。
その瞳は、わたしをきちんととらえている。
「このまま終わらせるのかよ……。知らない間に点数で賭けされて、偽りの点数見せられて、 それでいいのかよ。」
空雷先輩が真剣な顔でわたしに聞いてくる。
「すべては柳川(お前)の判断にある。」
みんなの声が揃う。
……わたしは目を閉じる。
今、何をすればいいのか……そして、何をするべきなのか……答えは一つ!
「いいわけないじゃない! 斎藤と佐藤を……デリートする!」