ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: —バグ、消去します— ( No.37 )
日時: 2009/07/25 23:17
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

「うわぁ〜……。」
今回のデリート現場のお屋敷を目の前に、緊張するわたし。

お屋敷と言っても廃墟だから、よく見るとおんぼろ。
だけど、パッと見廃墟とは気づかない。
それに、ここはちょっと森の中にある。
セミの声がやかましい……。

わたしたち三人——空雷先輩、雨雲先輩、わたし——は、このデリート現場の廃墟に来ていた。
夏の夜。そーとージットリ暑苦しいだろうと思って、みんな短パン、Tシャツだ。

時刻は……夜の9時。そーした方が雰囲気出るって曇先輩が。
「はぁ〜……。曇がその日の当日に詳しく話すからここに来いって言ったけど、なんでこんな書類だけなのよ!」
そういって、指で書類をはじく雨雲先輩。
確かに……こんな夜中に呼び出しといてこの始末はないでしょ……。

「まぁ、これが曇のやり方だ! この書類にそってやろうぜ!」
そう言って腕を頭の後ろで組む空雷先輩。
「まぁ……この書類によるとスタートは10時……。」
雨雲先輩の言葉で空気が固まる。

今は9時。そしてスタートってことはここに斎藤と佐藤が来るってこと……その時刻は10時……。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
わたし三人の言葉が闇の中でこだまする。

「急いでやらないと!」
「とにかく中にはいろうぜ!」
「うんうんうん!」
わたしたち三人は、慌てて門を通り抜け中に入って行った。

わたしたちは、大きくて重たい扉を開ける。
そして、一番最初に目に飛び込んできたのは……。
「わぁぁぁぁぁ……。」
わたしたちは歓声をあげる。
この屋敷、外から見たらオンボロ屋敷みたいだけど、中を見たらすごく幻想的……。

ろうそくがこの大きなホールの中をグルッ!と囲んでいて、すごくきれい……。
だけど、東西南北にある扉は固く閉ざされていて奥は見えないけど、すごく幻想的できれい……。

「へぇ〜……。やるじゃんか! 曇。」
「えっ!」
わたしは空雷先輩の言葉で驚く。
「これ、全部曇先輩がやったんですか!」
「当たり前だろ。曇しかこんなことしねぇーじゃん。あいつは、結構ロマンチストだからな。」
「へぇ〜……。そうなんだぁ〜……。」
でも、すっごくセンスいいなぁ〜……。

「綺麗ね……。だけど、見とれてる場合じゃないわ。はやく書類を読んでまにあわせなくちゃ! あと四十分しかない!」
「えっ!」
「マジかよ!」
雨雲先輩の言葉で空雷先輩とわたしは驚く。
そして、慌ただしく準備は始まった……。

今、わたしはろうそくを持って待機している。
あたりは真っ暗。森の中の木々達がざわざわしている。

わたしたちは、書類どおりにセリフを読んだりして、頑張った。
さすが元演劇部。セリフを覚えるのがとても速かった。わたしは、自分のことを言うからすぐに覚えられたし、空雷先輩はセリフのことなんて気にしなくて良かったので、準備は着々と進んだ。

そして、今——……。
わたしたちはもうすぐで10時になろうとしている。
高まる緊張感。もうすぐで佐藤と斎藤をデリートできるという快感……。
準備は揃った……あとは、斎藤と佐藤を待つだけ!