ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: —バグ、消去します— ( No.49 )
日時: 2009/07/26 23:52
名前: 空雲 海 (ID: d9r3SuxE)

「ねぇ! そーいえば、雨雲と曇お前、よくあんな危ない賭けしたよな。」
空雷先輩が思い出したように言う。

わたしたちは、あの部室にいて、ガラクタ山の頂上がいつものように空雷先輩。机に並べてタロットカードをやっているのが雨雲先輩。カチャカチャとキーボードを叩いているのが曇先輩。

「そうだよ! あれ、わたしすっごくハラハラしたんだから! 雨雲先輩と曇先輩は絶対勝つ自信があったの? なかったら大変なことに——」
「あった(わ)。」
……へ?
「勝つ自身があったわよって言ってるの。」
「……うそだろ?」
「ホントよ。」
ちょっと間を置いた空雷先輩の言葉は雨雲先輩によってすぐに返された。

「これは話術をうまく利用したものです。」
曇先輩がパソコンの画面の見ながら言う。
「雨雲先輩自信が毒を入れているので答えはわかります。雨雲先輩は『選びなさい』いいました。でも、これは主語を表していない。『あなたが選びなさい』と言ったらそれは限定している。それか『あなたが選んだものがわたしのものになる』と言ったらこれも限定している。」
そして、ちょっとここで間を置く曇先輩。

「だけど、ただ単に『選びなさい』と言ったら、こっちは毒の入っている方がわかるんだから相手が選んだものが毒だったら毒じゃない方を持てばいい。反対に、相手が選んだものが毒じゃなかったら、『これはわたしのものなのね』と言って受け取ればいい。主語を表していないくらいで、賭けを左右できる。」
そして、曇先輩の長い長い説明は終わった。
「なるほどね……。」

わたしが納得している時、空雷先輩の頭の上に「?」マークが飛び交っている。
「……どーゆ意味だ?」
聞いてくると思った。
「つまり、『選べ』って言ったら、選んだら言った人が選んだものを選べるのよ。だけど、言われた人がツッコミしたら、終りだけどね。」
そういって、華麗なウィンク。

わたしは、このウィンクにとらわれた人はもう終わったなと思う。
「だけど……曇先輩は現場に来なかったよね? なんで?」
わたしがみんなに聞く。
「曇は……現場に来ないわよ。曇は計画を立てるだけだから。」
雨雲先輩が言う。

「なんでなんですか?」
「さぁ? 曇に直接聞いてみたら? 今いるんだし。」
そういって、あごを曇先輩に向ける。
「うっ……。」
わたしがひるんでいる時に、フッ……と雨雲先輩が笑う。
「怖いのよね……。わたしも後輩なのに最初の時は怖かったわ。だけど、今はもう慣れたかしらね? ……。」

そして、わたしを見て優しく微笑む。
「あなたも慣れるように頑張りなさい。」
わたしはこの雨雲先輩の微笑みに、曇先輩がとても遠くにいるような感じがした。
「あっ! そーいえば、曇!」
空雷先輩が大声を出して言う。

「お前、なんであの時呼び出しといて書類だけなんだよ! あんなのぶっつけ本番じゃねぇーか!」
その声にパソコンの画面から目を離さないで答える。
「だって……そうした方がおもしろいじゃないですか。」

……沈黙がこの場を支配し、しかも空気を凍らせる。
ぶっつけ本番がおもしろくて、書類だけだったのか……失敗は許されないと言ったのは誰だ? ぶっつけ本番なんて失敗する確率が高くなるのと同じなんだよ!

これは、不良と魔女よりも恐ろしい……悪魔だな。
……沈黙がまだこの場を支配している。
そして、このままチャイムが鳴り、みんな逃げるようにこの場を去って行った。
……なんか二年の曇先輩が部長になった理由がわかったような気がする……。

こうして——、わたしたちは電脳探偵部に初めて入った任務を終えました。
初めてにしてはとてもよかったんじゃないかと思ったんですが、雨雲先輩やみんなはどう思ってるのかな……。まぁいいや。

これが、わたしの初めての任務です。
あの時、わたしは電脳探偵部に入ってもよかったと思ったんですが……やっぱりそうではありませんでした……。
まぁ、初めての任務が終わったので、それでいいじゃありませんか!

       斎藤・佐藤、デリート!