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Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.10 )
日時: 2010/01/16 17:17
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

交差点09

 銀髪少女こと“白銀の討ち手”と“双翼の闇”ダルシーは、それぞれ武器を構える。
 神崎は疑問に思う。ダルシーの持つナイフが、さっきのナイフとどう違うのかが。ダルシーの持っているナイフは先程と同じ、銀色に光るナイフ。
 神崎は目をよく凝らしてダルシーのナイフを見る。——文字。何語だかは分からないが、日本語ではない文字がナイフに彫ってある。まるで古代文字のような……。
 
「“落雷を二つ”(ドゥ=フェール=トンべ=ラ=フードル)」

 銀髪少女が何やらカタカナっぽい単語を呟く。おそらく何かの魔術だろう。
 神崎の予想は当たった。銀髪少女の右手——神器“雷神槌”(ミョルニル)の先端から轟音がし、二つに分かれた白い雷がダルシーへと襲い掛かる。
 だが殺し屋の魔術師“双翼の闇”ことダルシーが、これでやられる筈はなかった。ダルシーは雷が襲い掛かる寸前——何もない空間を、ナイフで引き裂く。
 銀髪少女のとまったく同じ雷が、そこに“発生”し銀髪少女の落雷が相殺される。……銀髪少女のはともかく、ダルシーはナイフで何もないところを切っただけ。一体何のマジックだろうか……ダルシーは魔術師だから、魔術(マジック)をしてもおかしくないが。

「……お前のルーン魔術はまったく衰えていないな」
「このナイフにはルーン文字で“雷”と刻んであります。勿論、私の持っているナイフ全てに“雷”と刻んであるわけではありませんが」

 神崎の頭に何か引っかかった。『ルーン文字』、聞き覚えがある。その文字自体に魔力が宿っており、その文字を使った魔術のことを『ルーン魔術』というとか。昔ネットで暇潰しに調べてみたが、最終的にはインチキと結論付けたものだ。
 だがその“インチキ”だと思ったものは、現実にあったらしい。何故なら今、ダルシーがルーン文字を用いた“ルーン魔術”を使ったからだ。

「そうか、じゃあ“炎”だとかも刻んであったりするのか?」
「“炎”以外にも“風”、水”などもありますが、これもごく一部です」
「……実に面倒臭いな、それ」
「何が面倒臭いのでしょう、ルーン魔術は確立した正当な“魔術”ですが」
「面倒臭いっていうのはそういう事じゃない。これを使うのは実に面倒臭い、オレはコリンヌとは違ってこういうタイプの魔術を使うのは得意ではないからな」
「ぐだぐだとほざいている暇があるのなら、早くその面倒臭い魔術を見せて頂きたいのですが」

 そうする、と銀髪少女は己の神器“雷神槌”(ミョルニル)を人間の右腕に戻す。
 対してダルシーは黙ってその魔術が発動するのを待つわけでもない、ナイフを何本も取り出して銀髪少女を抹殺しようと襲い掛かる。

「**……****……」

 銀髪少女は何か呟いている。何語かは分からない、外国語だろうか……とにかく神崎には、銀髪少女が何を言っているのかは分からなかった。
 ダルシーは魔術を発動させまいと、ナイフを銀髪少女へと振り下ろそうとする。

「*……***……**!」

 その時、銀髪少女は何かを言い終えた。