ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.30 )
- 日時: 2010/02/04 20:55
- 名前: 更紗@某さん ◆J0e2FQAL2U (ID: YpJH/4Jm)
交差点14
冷酷な一言にオズが答える前に、ルーン魔術の護符が爆発する。
「チッ」
オズは軽く舌打ちをし、爆風から逃れようと上に高くジャンプした。そして僅かな滞空時間にもう一丁装飾銃を取り出し、コリンヌに金色の光を帯びた弾丸を連射する。だがコリンヌは弾丸を難なく避け「どこ狙ってるんですかぁ?」と嘲るように一言。
着地すると、つくづく面倒臭い奴にあったものだと内心もう一度舌打ちをする。
「殺しに来た」などとコリンヌは簡単に言ったが、その言葉に込められた意味は『人の命を奪う』という事。つまり言うと目の前の人間は、人を殺す事に何の躊躇いも持っていないのである。“双翼の闇”といい“夢幻の旋律”といい、元々魔術師にろくな人間はいない。人の命をゴミのように扱う魔術師だってざらにいる。
——もっとも、今まで数々の人間の命を奪ってきた自分が言える事ではないのだが。
「貴方の力はこの程度なんですか? まあ弱い方が殺しやすくて、私としては楽なんですがね」
「悪ぃけど俺はまだ死ねねえよ、“夢幻の旋律”」
「『死なない』じゃなくて『死ねない』なんですか、まあどっちだっていいですけど。最低限一生動けねえ身体くらいにはしてやるんで、安心しちまって結構ですよ——あと」
コリンヌは右手に持っていたうち、一枚の護符をオズに向ける。
「魔法名で呼ぶなっつったでしょーが!!」
怒りの咆哮と共に、ルーン文字が刻まれた護符が吹雪へと変化しオズへと襲い掛かった。オズはとっさに銃の引き金を引く。
バァン!!と言う風船が破裂するような音と共に、銃口から弾丸が発射された。ただ少しおかしいのは、金色の光を帯びた弾丸が子供の頭ほどもある巨大なものと化しているのだ。
コリンヌはその一撃に対し、瞬時に護符を並べて「異なりし氷と刃。照応、眼前の我が敵を殲滅せよ」
護符は何十何百もの氷の刺となり、子供の頭ほどもある弾丸を相殺する。
装飾銃から発射された弾丸の速度は、だいたいで言っても音速はある。先程もそうだが、普通の人間が見切れるスピードではない。別に小難しい事ではない。——魔術師がそこまで“異常”という事を示しているというだけ。根拠も法則も無く、只それだけだ。その中でもコリンヌは更に“異常”の域にいる事が、オズには分かった。
だが、それ程の相手でもオズは怯えはしない。このレベルの魔術師なら、今まで何人と相手にしてきた。そして何度も殺してきた。
「ねえ、貴方の魔法名って確か——“黒の余韻”でしたっけ? 本当の名は何て言うんですか?」
「名は、……オズ。で、それがどうしたんだ」
それを聞いたコリンヌはクスリと笑う。
戦いの最中、急に真名を聞いてくる相手にオズは戸惑う。——あるいは、質問された事にではなく名を名乗る事に途惑っているのかもしれないが。
「そうですか、ではオズ。答えたくなきゃ答えなくてもいいですけど、何で貴方“堕天の一団”にいるんですか?」
「……は?」
「だから、何で貴方が“堕天の一団”にいんのか聞いてるんですよー」
「……別にどーだっていいだろ」
オズは片方の装飾銃を放り投げてはキャッチしながら、コリンヌの問いに答える。何か言いたくない事情があるのか、それとも本当にどうでもいいのか
コリンヌはそのどちらかは分からない、いやコリンヌの目的はそこではないのだろう。これ以上問い詰める様子はない。
その代わり、衝撃の一言を発した。
「貴方、“堕天の一団”を抜けて“薔薇十字団”に入りませんか?」
コリンヌが敵に対して発した言葉は、それだった。