ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.4 )
- 日時: 2010/01/16 17:13
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
交差点03
一瞬にして神崎の動きが停止する。
「はい? 妖怪?」
「わしは“九尾の妖狐”が真名となる。“詩世”はぬしら人間で言う仮名のようなものじゃ」
今の神崎にとってそんな事はどうでもいい。
この少女は今自分の事を“妖怪”と言った。先程の“魔術師”といい、ネジが数本外れている程度のレベルだろうか。頭がどうかなってるんじゃないかと神埼は本気で思う。
「お前頭大丈夫か……? 保護者、いや親はどこだ。家まで送ってやるよ」
「頭はどうにもなっておらん、どうかしているのはぬしの頭の方だ。わしは九尾の妖狐だ。『九尾の狐』でも『九尾狐』でもあっているが」
「そんな事どうでもいいから、いやほんと。漫画の影響で殺人しちゃいましたって奴かお前は?」
おおかた陰陽師や妖怪系の漫画でも山ほど読まされていたのか。九尾の妖狐など思いきり妖怪じゃねーかと、神崎は自称妖怪少女を心配する。
詩世は神崎があまりにも自分を狂人扱いする事を、良く思ってないようだ。いや、誰でも狂人扱いされれば不快だろうが、詩世はレベルが違う。既に詩世の周りには刺々しい程の殺気が渦巻いている。
「な、何だよ……」
「そんなにわしを認められないなら、証明してやろう……小童」
はあ?と神埼が聞き返すより、詩世の方が一歩速かったようだ。
そして神崎は唖然とする。
「……」
「どうだ、これでわしが九尾の妖狐という事を認められるか?」
放り出した神崎のマフラーが、燃えた。真っ赤に揺らめく炎に包まれ、あっという間に燃え尽きる。
とにかく急いで水を持ってこなければ、と慌てた神崎だが、詩世がパチンと指を鳴らすと何事も無かったかのように炎は消え、そこには真っ黒焦げになった神埼のマフラーしか残っていない。
神埼は悪夢であってほしいと願う。
「俺のマフラー……」
「どうじゃ、これでわしが妖怪だと——っておい!」
詩世の言葉を聞き終える前に、神崎は何とか生き残った手袋とコートを身に着け、外へと出て行ってしまった。
外に出て一度落ち着けば、この悪夢も覚める——と思ったのだが。
「……マフラー無いと寒いわやっぱ」
コートと手袋を着けても、首の周りは冷気に触れて冷えていくのであった。