ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.9 )
日時: 2010/01/16 17:16
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

交差点08

 “双翼の闇”がナイフを振り下ろそうとしたところに、光の矢が一閃。“双翼の闇”の手首を貫く。
 手首を伝う血の雫も気にせず、“双翼の闇”は後ろを振り向く。
 “双翼の闇”、そして神崎の視界に映ったのは銀色の髪に碧眼の少女。“双翼の闇”と同じくノースリーブにスリットが入った黒服を着用し、髪型は短いが横髪だけは伸ばしている。
 神埼の時とは違い、今回ばかりは邪魔者の登場に苛立ちを隠せないようだ。表情はまったくの無表情なのだが、かなり殺気立っている。

「……“白銀の討ち手”邪魔をしないで頂きたいのですが」
「伝説の殺し屋がこんなところで何をやっている、“双翼の闇”——いや、ダルシー=キャメロット?」

 ——ダルシー=キャメロット、それが少女“双翼の闇”の真名らしい。
 “双翼の闇”、ダルシーは真名を呼ばれた事に更に苛立ちを増した様。片手に握るナイフが銀色に光る。

「随分と物騒だな、オレが何かしたか? したといえば結界に穴を空けた事くらいだが」
「……邪魔をした事から私の真名を呼んだ事まで、全てが私を苛立たせていますよ」
「そうか」

 どうやら“白銀の討ち手”なる銀髪の少女と、ダルシーは知り合いのようだ。それとは関係無いが、女なのに自分のことを『俺』という女性は本当にいたんだなと、神崎はボロボロの身体で少し驚いた。
 だがのんびりと考え事をする暇など、一瞬で神崎には無くなった。神崎を足蹴した時のあの速さで、ダルシーが銀髪の少女と間を詰める。そして片手に握っていたナイフで、少女の急所を狙う。
 「危ない」と言う間もなく、ダルシーの持つナイフは銀髪碧眼の少女の急所を——。

「……へっ?」

 神崎は目の前で起きた光景に、思わず間抜けな声を漏らす。
 銀髪少女の急所を狙ったナイフは——“少女の異形な腕によって”カキンと音を立てて狙いを外す。
 銀髪少女の右腕を見てみると、肘から下が黄金に輝く“巨大な槌”となっていた。少女のその変わった槌に対して、ダルシーは感想を言う。

「相変わらずですね、貴女の“雷神槌”(ミョルニル)は。あらゆる敵を打ち砕きし“最強の槌”(ウォーハンマー)。昔と同じ、侮り難いもののようです」
「オレの場合、神器ミョルニルを腕と融合させてある事は知っているだろう。そこらのナイフで傷を付けられるモノじゃない」

 銀髪少女は無愛想に腕の槌の説明をする。どうやら少女のミョルニルという槌は、少女の肘から下と融合させており、自由に腕を槌に変えられるという物のようだ。どこのファンタジーバトル漫画だと、神崎は唖然としながら眺める。
 巨大な槌を目にしたところでダルシーはまったくうろたえず、至って冷静沈着。どいつもこいつも化け物じみた奴らだと、半ば神崎は恐怖する。
 ダルシーは銀髪少女相手に何をするのかと思えば、先程跳ね返された筈のナイフをまた取り出した。

「……お前の“そのナイフ”を見るのは久しぶりだな」
「ええ、貴女に対してはそろそろ魔術を使わないと、さすがに私でも殺されますから」
「できれば本気なんて出さないで、おとなしく倒されてほしいんだがな——残念だ」