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Re: 鬼桜伝 ( No.18 )
日時: 2010/01/21 15:57
名前: 咲夜 (ID: L1bEpBtf)

其の九 失くした自分


音もなく、お守りが地面に落ちた。
花百と初音は、真っ青な顔をして、鬼は笑いながらその様子を見ていた。十秒ほど沈黙になり、花百が、

「ッぁ?!あ、あぁぁぁああああああああああ!!」

頭をおさえながら絶叫した。
初音は小さく舌打をし、花百の下へ駆け寄った。

「あああああああああぁぁぁぁぁ! いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!!」

花百はまだ絶叫する。


           *

「おや、お守りがとれちゃったようだね。魁さん」

ずっとこの様子を見ていた双子と魁は、互いに顔を見合わせた。珍しく、双子は不気味に笑うことはない。魁は絶叫する自分の妹を見て、

「行かないと、自分を失くすよな、あいつ」
「しかも今夜は満月だからね、疾風」
「そうだね、琥珀」

三人は静かに、地へと降りて行く。

  
           *

「花百!か、お!しっかりしなさい、花百!」

初音が何度も呼びかけるが、花百はまだ叫ぶ。

(どうしたんだよ、小娘もどき)
「お前がお守りを壊すから、こんな風になるんだ!」
(これからどうなるんだ、そいつは)
「これから?・・・「 」になってしまうんだよッ」
(仲間だな)

突然、花百の叫び声が止まった。
ゆらりと立ち上がり、鬼を見上げる。銀の髪が風になびいた。そして、笑う。