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Re: 鬼桜伝 ( No.29 )
日時: 2010/01/26 16:44
名前: 咲夜 (ID: QP4Yy5Wh)

其の拾弐 信じることができないから。


「刀女ぁッ、起きて、大丈夫なのか?!」

お茶を飲んでいると、愁が走って来た。たぶん、雪から聞いて飛んできたのだろう。心配してくれるのは、とても嬉しいのだが、もう私の事を「刀女」と呼ぶのはやめてほしい、と思った。でも・・・心配してくれて、とても嬉しい。でも・・・「刀女」はやめてほしいっ!!

「だ、大丈夫よ、愁」
「そうか! 安心したっ」

優しく笑う愁の顔を見て、私も安心してしまった。
愁は優しく、私の左手を握った。───あたたかい、人間だ。人とは、こんなに優しいものなんだろうか?優しすぎて、私はたまに壊してしまいたくなる。でも壊したら、その優しさは消えるのだ。

「花百、また難しいこと考えてるだろー?」
「え? いや、そんな・・・」
「僕たちは花百の敵じゃないんだから、信じて」

───敵、か。
貴方たちにとって敵じゃないと思っていても、貴方たちの敵は私なんだよ。それくらい、愁も知ってるはずだ。なのに何故、そんなことを言うのか。

「起きた、んだな」

久し振りに聞く、懐かしい声がした。

「魁、兄さ、ま・・・?」
「久し振り、我が妹、木下花百よ」

わざとこんな言い方をするから、私と愁は笑った。
魁兄様も笑う。
久し振りに聞いた声、見た顔、あの笑顔。


───本当ニ信ジテイイノカヨ、花百。