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Re: 鬼桜伝 ( No.5 )
日時: 2010/01/17 14:58
名前: 咲夜 (ID: Y8BZzrzX)

其の壱 銀髪、紫の瞳。


文久三年、冬の京。
近くに大きな神社がある、少し大きな屋敷にて。

「弥生、少し散歩に行きましょうよっ!」

明るい少女の声が響き、襖が開かれた。その少女の髪は何故か銀髪で、その少女の瞳は何故か紫で。この時代にしては、少しどころではないくらい変、だった。普通、黒髪か茶髪で黒い目か茶色い目だろう。でも、この少女は違ったのだった。しかも、女のくせに刀を持っている。そこも変、なのだろうか。

「散歩なら、愁さんと行きなさいよ?愁さんなら、行ってくれるわ!喜んでね」
「しゅ、愁と?!愁なら今、忙しくてこの屋敷にはいないわよ!」
「あら、さっき見たけど・・・?気のせいだったのかしらねぇ」
「そうよ、弥生の気のせい!」

弥生、と呼ばれた少女は普通の黒髪に黒い目だった。黒髪は腰の真ん中あたりまで伸びている。刀も持ってなく、一応ごく普通だった。

「何が気のせいなんだ、花百?」

突然、銀髪の少女の背後から若い男の声がした。少女はゆっくりと振り返る。
後ろで一つにしばった、長い黒髪。綺麗な黒目。名前は、沖田愁。銀髪少女、木下花百のことが大好きな男だ。いつものように、ニコニコと笑顔で話しかける。

「しゅっ、愁?!何でいるんですか・・・っ」
「さぁ?何でだろうね、僕には分からないなぁ?・・・あははは!」
「あはは!じゃなくて!・・・この屋敷に帰ってこないかと・・・」
「何、心配してくれてるの?・・・照れるなぁ!」

花百は顔を真っ赤にさせて、違います、違います!と愁に抗議していた。それをいつものように、優しい笑顔で見る弥生。

───でも、運命は変えられないんですよ?