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Re: 鬼桜伝 ( No.6 )
日時: 2010/01/17 15:37
名前: 咲夜 (ID: Y8BZzrzX)

其の弐 人であり、人でない存在。


「花百は、ちゃんとお守りをつけているかい?」

白い息を吐きながら、巫女装束の女は弥生に尋ねた。弥生はうなずき、目を瞑る。巫女装束を着た女、初音も目を瞑る。しばらくして、二人は目を開ける。初音は弥生のうなずきが、嘘じゃないと感じた。

「初音様、今夜は満月です。花百と、行くのですか・・・?」
「当たり前だろう、弥生。花百がいないと、できない。満月の日はな」
「───前も言いましたが、死なないで下さい。生きて下さい」

弥生が、とても心配そうな表情で初音を見上げる。
『死なないで下さい』『生きて下さい』、か。初音はため息をつきそうになったが、弥生がまだ見ていたのでやめた。・・・花百は、望めば死なないさ。望めば、花百は永遠に生き続けるだろう。私が死んでも、花百は生きる。

「初音様、体の調子でも悪いのですか・・・?」
「あ、弥生・・・。ぃや、大丈夫。気にしないでくれ」

そういえば、初音も花百と同じく刀を持ち歩いていた。巫女なのにな、と弥生は思う。でも、仕方ないことだ。初音様と花百のおかげで、平和が、京が、護られているようなものだから。

───あの子を孤独にしたのは私だ。

初音は何度も思い、ため息。

───でも、これからも孤独になるだろう。

なぜなら花百は、人であり人でない存在なのだから。そして、私はあの子にいつか、罪を許してもらわなければならないのだ。