ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: エミルのロッカー ( No.11 )
- 日時: 2010/02/03 06:37
- 名前: ヨシュアさん ◆FdjQaNCWZs (ID: bQobMYPz)
第七話『全速力+大群×怨み辛み=逃げろ!!』
僕は今、学園から出て、一番近くの書店までのほぼ直進800メートルの坂を全速力で走っていた。90度とは言わないが、かなり急な坂だ。この坂が自分の走りに拍車をかけている。多分、ジャンプしたら、どごぞの少女のようにものすごいジャンプを披露出来るかもしれないが、多分タイムリープして未来の真っ白な病室に居るだろう。
ていうか、そんなつまらない冗談を言ってる場合じゃない……!
僕は今、死ぬか生きるかの瀬戸際を走っているんだ……!!
大量の男子生徒たちが怒号の声を上げて、まるで山から集団で下りてきたイノシシの勢いで僕を追っていた。
うん、止まったらとりあえず、ブラッディ・カーニバル……。血祭りに上げられるのは目に見えている。
さて、こうなった理由をきっちり説明しよう。
理由その1
僕がソーサリスのアトリエに居たことだ。
そうだ女性専用の場に男が居るのはおかしい。追い出されるのが一般的である。だけども僕は自分の意思でなく、彼女らから許されて連れて来られたのだ。他の男子から見ればエデンに誘ってくれる天使が舞い降りたと言ってもいい。
理由その2
彼女たちはただの少女ではない。これが一番重要である。
ただの少女ならば、ここまで大事になることは無かったかもしれない。ただ、彼女たちは美少女であり、少女というそれだけで十分魅力的な言葉の前に、“美”という世界の人間すべてが追い求めるものがある。例え自分は世の中で一番醜いものになるという“それ”もまた本人にとって“美”であり、“美”を追い求めない者は居ない。アート然り……。料理然り……。しかも、彼女たちの“美”はただの“美”じゃない。それも五つ星級の“美”なわけで……。
理由その1とその2を見れば、怒りを覚える男子の気持ちが分からないでもない。だけど……、命の危険を肌で感じる僕は止まるわけにはいかないんだぁぁぁぁぁ……!!
不意に目の前に人影が見える。
僕のクラスメイトのルメナ・フォーミラさんだ。青く長い髪を後ろで束ねた姿が目立つのですぐわかる。
気が強いけど、優しくてクラスでの数少ない友人の一人だ。
ルメナさんとは昔からの知り合いみたいなもので、以前にルメナさんの友達に紹介してもらう際に、幼馴染という紹介をしてもらったことがある。
いや……だけど、幼馴染と紹介されるぐらい、そこまで長い付き合いだったけ?
僕は少し首を傾げた。
彼女も“あれ?”と言った顔でこっちを見ている。
「エミ……ル……?」
「ルメナさん……!逃げてっーーーー!!」
