ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: エミルのロッカー☆第九話更新☆ ( No.14 )
日時: 2010/04/12 06:35
名前: ヨシュアさん ◆FdjQaNCWZs (ID: bQobMYPz)

第十話『恋とジャンプとライバルと』

私は恋のライバルというものを知らなかった。

そんなもの少女マンガやドラマの中のものだと思っていた。

ただ……エミルがモテなかっただけかもしれないけど……。

だけど、知ってしまったのだ。ライバルのことを。
別にライバルと言っても、目の前にある少年月刊誌のことじゃない。あたしの真後ろ。月刊誌コーナーに背を向けた向こう。

いま……この書店の入り口に居るあの女の子。

長く美しい赤い髪を揺らしながら、エミルたちに近づいていく美少女。

この瞬間、あたしの第六感に“ビビビッ”と電波が流れる。

向こうも“それ”を感じたのか、途中で足を止め、こちらを見る。

万引き犯が横を走り抜けていき、店員(ルークスさん現在21歳)が「捕まえてくれ!」と叫んでいるが、そんなの関係ない。

今、あたしたちの視線の間には火花が飛び散っているのだ。

その火花はどんどん膨れ上がり、線香花火から、夏の夜に打ち上げられる菊先に変わり、その次に牡丹、最終的には花火としての温度が一番高い銀冠へと変貌した……。

それまでに恋のライバルというものは熱いものなのだ……!

「あ、今日創刊だった……。」

その名前も知らぬ、美少女はするりと攻撃的と思わせる銀蜂をも打ち出さんとするあたしの横を抜けて、ガンガン3月号を手にしていた。

「確か今月はハガレンのドラマCDが……」

そんなことを呟いて、再びあたしの横を通り抜ける。とにかくこっちのことなんて全然意識をしてない。そのまま少女はエミルとリュウガが居るレジへと小走りで走っていた。

「あれ〜…………?」

うん、どうやらライバルじゃなく……。別に講談社のライバルのことじゃないよ。

「勘……違い……?」

普通のお客だったらしい。

「あ、いたいた」

またも店の入り口に見知らぬ少女たちが立っていた。

後一人の緑のショートカットは犯人の首根っこを捕まえて入場している。


「お買い上げありがとうございます。またお越こしくださいませ」

店員(ルメラさん20歳)が礼儀正しく“ペコリ”と一礼してくる。美しさと可愛さを同時に持った笑顔の彼女を見て、癒される男子生徒は多く、この笑顔を目的に買いにくる男子生徒も多い。

まぁ、見た目も中身も本当に良い人なので、同じ職場のルークスさんが惚れないわけもなく、告白のタイミングをうかがっている。

といっても実はルメラさんも、ルークスさんのことを想っていて、両思いだったりする。二人が、寄り添うのも時間の問題であった。

「さて、アトリエに戻らなくちゃ……」

エミルはナイロン袋の中身を少し確認してから、そう呟く。

「エミル……」

突然隣りに居るリュウガ以外の人間から声を掛けられた。当然、料理本に夢中な死音くんでも無く、エミルはすぐにその方向に振り向く。

「ん……?誰だ」

振り向く先に居たのは……。

「あれ?リフィスさん……?どうしたんです?」

月刊少年ガンガンを両手で、抱えているリフィス・ティルミだった。