ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 怪盗R・B 読者、お待ちしております! ( No.52 )
- 日時: 2010/03/12 16:33
- 名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: MQ1NqBYl)
「動き出したわ」
ソノリテが小さくつぶやいた。
しかし、この静寂の中、そんなつぶやき声でも響いてしまう。
ソノリテは、あのホワイトの通信から、連絡は入れていなかった。
いや、もしかしたら「連絡」なんて言葉は頭の中には、無かったのかも知れない。
動揺した。自分がやってもいいのかと——。なぜなら、ホワイトは自分がやると決めた以上は、絶対に曲げない人だった。
まるで、自分の獲物を人に横取りされないように、するように——。
しかし、ホワイトからの命は絶対。拒否をするということは、死を意味する。
「ホワイトが、あんなん言うてるんやから、うち等がやってもええっちゅーことやろ?」
「……ええ」
ソノリテが、遅れて返事をした。
あれから、ソノリテの目線は怪盗R・Bを、ずっと捕えている。
その時、ようやく低能なマフィア共を片づけているR・Bの動きが止まった。
「何が始まるのかしら……」
ソノリテは、生唾を飲み込んだ。
「マフィア風情が」
R・Bは吐き捨てるように言う。
目線には、廊下いっぱいに並んでいるマフィアが……。
ガラスのない窓から、月夜の明かりだけが降り注ぐ。
緊迫した空気が流れる。どちらかが最初に動くのか——。
六人のマフィアのうち、真ん中のマフィアがホルダーに手を掛ける。
その瞬間——。
六人のマフィアが一斉に銃を放つ。
R・Bとマフィアの距離は約三メートル。
当たる確率は少なくはない。
全弾丸が丁度月夜に当たると、影が出来る。
R・Bはその影に向かって、手を横に振りかざす。
弾丸の影が真っ二つに割れた。
それと同時に、弾丸も割れる。
真っ二つになった弾丸は、空しく床に落ちる。
「……なんだ、今のは」
マフィアの一人が言う。
「あんた達は私の力を、ナメてる」
R・Bは一歩近寄る。
その気迫に、押され発砲できないマフィア。
「オンブルは変装できるだけじゃない。オンブルは影——。影を使って変装することも切ることも出来る。つまり——」
R・Bは月夜に照らされた自分の左手の人差し指を、右手で振り下ろす。
影から血が流れる……。
同時に実態の指も切られ、影と同じ血が出てきた。
「私が影を切断すると、その実態も切断できる能力を持つ。ちょっと実践してみようか」
R・Bは手を一瞬で振りかぶる。
それと同時に、危険を察したマフィア達も、発砲する。
弾丸の影が切れる。それと当時に実態も切れる。
しかし、それだけでは終わらなかった。
マフィアの銃が影で切れる。
気付いたマフィアは、とっさに月夜の明かりから身を引くが——銃は無残にも真っ二つに切り裂かれた後だった……。
「残念。あともうちょっとだったのにね……」
この場を楽しんでいるかのように言うR・B。
そのままR・Bが続けた。
「さぁ、どうする? もう銃はないし、武器も何も持ってないだろ」
「なぜわかる?」
「ハッタリはよせ。さっき私があんた達の影をコピーした。何も武器が持ってないのはわかってるんだ」
「…………」
何も答えられないマフィア。
死に恐怖を怯えている訳ではない。しかし、生きるのは、もう諦めている。
彼らはそんな瞳だった。
「つまらんよ……。そういう武器に頼る連中は。それしか持ってないから、壊したらもうそこでゲームオーバー……。今回もつまらなかったから——」
R・Bが手を上に持っていく。
「終了にしようか」
不敵な笑みを残すと、R・Bは手を振りかざす。
逃げも隠れもしないマフィアは、影を切断される。
まるで、時間がゆっくりと流れているかのように、静かに崩れていった。
きれいなフローリングが、血の海に染まっていく……。
「最後に逃げなかったマフィアのプライドに、拍手って感じか?」
そう言うと、R・Bは軽々と死体をまたぎ、そのまま去って行った……。