ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 刃 ( No.12 )
- 日時: 2010/02/06 12:37
- 名前: right (ID: zuIQnuvt)
- 参照: 『刃』はご覧のスポンサーの提供でお送りしています。by架月
Ⅱ.手紙 後半
いらない。
家族も何も。
いらない。
いらない。
いらない。
全部、消えてしまえばいいのに。
やめろ。来るな。来るな。
『僕』を殺さないで。
『———』。
——ハシダ カヅキ様へ
人間の記憶は曖昧だ。
覚えていないだろうが、あんたは『僕』を知っている、知っているはずだ。覚えていないのは、あんたの父親のせいかな。
それよりも、あんたに希望を与えてやる。
ただし、十月三日から十日の間に『グングニル』というドアをその鍵で開けろ。そうすれば、あんたは『救われる』。そこにいる幼馴染も、いや、日本にいる全国民も『救われる』。ただし、“とある犠牲”が必要だ。どう決めるかはあんた次第。
see you 『again』.
ミヅキより——
ミヅキ。
知っている。忘れるわけないだろう。
あいつは、あいつは…あいつは……!!
もうとっくにこの世にはいないはずだ!なんで、ここに…いて……。そんな……はず、ない…のに。
手紙がはらりと架月の手から舞い落ちる。
それを拾い、友哉もまたその手紙を見る。
…だれだっけ、『ミヅキ』。知らねえや、俺は。でもなんで、俺がいるって知ってんだ…?気味悪いな。ただの、おふざけじゃないのか?
「架月さんよぉ、何びっくりして…」
笑いながら俺がそう言うと、架月は俺をにらみつけた。思わず、その目にさすがの俺も笑うのをやめる。
「ミ、ヅキ…は、俺の、消えたはず、の…」
これは、いつもの架月ではない。動揺、怒り、悲しみ、驚き、歓喜が混ざった小さな声。
「あいつは、あい…つは」
それに、何かに恐れていると言ってもいい様子だ。
この様子、今まで見たことがない。よっぽどのことだろう。
「んで、何なんだ…?」
「俺が、殺し、た…はずの」
は?今、何て。
「はず、の?」
架月の口がこう動いた。
『弟』
続く