ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 刃  ( No.127 )
日時: 2010/02/06 13:04
名前: right (ID: zuIQnuvt)
参照: 『刃』はご覧のスポンサーの提供でお送りしています。by架月

Ⅸ.それは必然的に持ってしまった力でしかない 前半

銃声が、彼らの戦いを止めた。

“ドン”
一つは腹を貫き、
“ドン”
一つは右足を貫き、
“ドン”
一つは左胸を貫いた。

全ては弾の無駄遣いとなってしまった。
撃っても死なない体。
また、撃たれた場所がきれいに再生していく。
「な……で…」
泣きそうな、顔に声。

「さて…」

速い。
架月が気が付かない間に、その声と同時に後ろに回り込まれた。
「っく…」
両手を拘束され、何かを耳元で囁かれる。

「……!!」

恐れが、憎しみに変わる。


友哉は制服少女を肩に抱え、ゴスロリ少女と、道の長い商店街の中を歩いていた。
「どこに向かってるんだぁ?」
ゴスロリ少女は、先ほどから何を言っても返事がない。何もしゃべるなと言われているのだろうか。あの、ニコニコ野朗の金城心葉ってヤツに。
しかし、この制服のオンナノコのさっきの変な力。目が赤く光って、数秒経たないうちに、強い力で首を絞められた。目が、赤く光る。何か、見たことあるような、ないような。昔に、小さい頃どこかで。
「っ!」
思い出そうとすると、頭に激痛が走る。
何なんだ、これ。何かが、出てくるような感覚。体の中から、外に出ようとしている。何かが。わからないけど、出てくるな。それで死ぬのはお断りだし、苦しむのもNG。
「あなたにも……関わりがある」
ようやく口を開いた。
唐突ですけど、何が?って言いたかったけど、頭が痛すぎて、声に出なかった。いったん立ち止まり、その場に、気絶している制服少女を下ろす。
「……っ」
今までにない、頭痛。何か変なモンでも食べたか…俺。
ゴスロリ少女も立ち止まり、友哉に向けて何かを言った。

「あなたは——」


父さんは首を斬られ、腹を滅多刺しにされていて、母さんは両手足が細かくばらばらにされ、頭の骨が折れていた。
それは、俺が中学のとき。ドアを開けたら、玄関が血まみれだった。真っ赤で、鉄臭くて嫌だった。
キッチンには母さんの死体。二階の書斎には父さんの死体。
不覚にも、かわいそうだと思ってしまった。
でも、いい様だった。ざまあみろ。俺たちを人間として扱わなかったから、こうなったんだ。自業自得。神様からの天罰だ。
だが、それでも二人を愛していたようだった。

だって、今。

殺したヤツが、憎くて仕方がない。

目の前にいる、『弟』が。

        続く