ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 刃  ( No.159 )
日時: 2010/02/07 20:06
名前: right (ID: zuIQnuvt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=13503

第二弾で採用された十和&жナイトжさんのオリキャラが登場しますので、詳しくは参照を。

Ⅹ.tempus fugit[時は逃げ去る、光陰矢の如し] 上

我ハ願ウ。
アナタニ幸セガアランコトヲ。

『ultimate』

俺は、ただの兵器にしかすぎなかった。


「槇」
「わかってる」
紺色の髪を靡かせながら走る青年と、その右隣にいる金髪の青年はテロ組織『ドラゴン・スラッシュ』の幹部だ。「槇」と呼ばれた紺色の髪の青年は、途中にあったビルを駆け上がり、屋上でターゲットに向け、ライフルを構えた。
今、彼らが追っているのは、反テロ組織『鷹』の幹部の一人、浜音聖也。彼もまた、『能力』を持っているらしい。『ドラゴン・スラッシュ』の中では要注意人物の一人として注目されている。
その能力は。
物質を『溶かす』。つまり、物質の結合、即ち分子と分子を繋いでいる『電子』の繋がりを寸断し、物質を『分解』する能力だ。
そんなヤツが、目の前で立ち止まり俺を見た。
来る。
すぐに自分の武器を構える。
彼の目が、赤く光る。
「槇っ!!」
ビルの屋上に向かって仲間の名前を叫んだ。一秒も経たないうちに、ライフルから放たれた数発の弾が浜音に向かって行く。
しかし。
その弾は、浜音に当たる前に、片栗粉のようにどろどろに溶けてしまった。

「………!」

浜音の動きが突然止まった。何やら、商店街の方をじっと見つめている。仲間がいるのだろうか。

「『ultimate』か…っ」

感じる。あの『研究室』以来の、この感じ。重くて、苦しくて、押しつぶされそうな感覚。『paramount human』にしか感じない、力。
目覚めてしまった、『ultimate』。
目覚めてはいけない、『究極』の力。
自分の力とは似ているが、物質の分解どころではない。俺たち『paramount human』の力も消し去ることのできる、『万物消滅』という力。地球も消滅することもできる、『paramount human』の最高作のうちのひとつ。

『paramount human』、最高位の人間。

「ああ、ああああああああああっ!!」
自分の目の前にあるものが、消えていく。看板も、店も、全て。
いつの間にかリュウは消えており、ここにいるのは自分と、テロ組織の少女と、友哉。これが『ultimate』の力。これが欲しいがため、『ドラゴン・スラッシュ』はゲームを開催した訳だ。しかし、これをどうやって止めればいいのだろう。

止めなければ、死ぬ。

「わたしが、止めて見せます」

男の、声。

       続く