ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 刃 ( No.166 )
- 日時: 2010/02/27 13:54
- 名前: right (ID: zuIQnuvt)
- 参照: 『刃』はご覧のスポンサーの提供でお送りしています。by愛美&幸輝
Ⅹ.tempus fugit[時は逃げ去る、光陰矢の如し]中
「何で、父さんと母さんを殺した…」
どうしても、許すことができなかった。
「僕たちを人間として扱わなかったから、それだけ」
でも、俺たちを生んでくれた、人たち。
どうしたんだよ、どうしてそんな風になったんだよ。
ミヅキ…!
「心葉先輩っ!」
レオの声が体育館に響き、皆、視線を心葉に注ぐ。
心葉の足元には、手榴弾。背には、ナイフを持った女。逃げれない。手遅れだ。
しまっ
大きな音を立て爆発し、煙が宙を舞う。同時に、ナイフも投げられた。
普通の人間なら、ばらばらになっていただろうが、そのような気配がない。爆弾を仕掛けたのは、軍服の阪野だろう。その阪野の後ろに、背にナイフが刺さり、血だらけな心葉がいた。鎖鎌を持った、『狂人』。その鎖鎌は、阪野の背に刺さっていた。いや、右の胸を貫通している。
「あっ……っぐ」
そのまま、うつぶせに倒れる。
そして血が、どんどん広がって行く。
「幸輝さんっ!」
黙って鎖鎌を体から抜き、目を福井に向ける。
途端、笑った。
「ヒッ…ヒャハハハハハハハハハッ!!」
大輝は動いた。先程、『この状態』になったら殺せと、言われたからだ。銃を、彼の頭に向ける。
だが、レイナに止められる。
「何、してんのっ!?」
「ああなった心葉さんは、誰にも止められないんだっ!殺さないと、止められないんだよ…」
そうしないと、また皆殺しにされる。
以前のように。
被害者をなるべく出さないようにも、前ボスからも言われている。
あの時は、心葉さんよりも強い、前ボスがいたから何とかなったけど、今は、もう、誰にも止められない。
死ぬのを待つか、殺すか。
「ヒヒッ…アハハハハハッハハ!」
鎖鎌を振り回し、ターゲットを福井に向ける。
殺気が、すごい。
首にナイフを突きつけられているような幻覚に陥りそうになる。
一言で言うと、恐い。
「…っ、ミヅキさんっ!一旦ここは戻りまへんか!?幸輝さんが…」
体育館の入り口で架月とにらみ合っているミヅキに向けて、そう言い放った。
ちらりと、阪野を一瞥する。
「わかった」
ミヅキは阪野に歩み寄り、肩を貸す。
耳元で聞こえる息は、今にも息絶えそうな虫の息。
「っぐ」
鎖鎌で腕を僅かだが、抉られる。それでも尚、斬りつけてくる。ナイフで何とか弾いているが、一撃一撃が重くて、肩が壊れそうだ。
「んん?」
ヤバイ。
ミヅキと阪野の方を見た。
「待てよ……ヒヒッ」
一瞬で、ミヅキの前に立ちはだかる。
しかし、ミヅキは動じなかった。むしろ、笑っている。
「心葉っ!」
架月が叫ぶが、その耳には届いていない。
ミヅキの手が、彼の頭を掴んでいた。
そして、嫌な、音。
続く