ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 刃 ( No.244 )
- 日時: 2010/02/26 15:01
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=13503
Ⅰ.astray[迷走・堕落] 下
「パラ、マウント…ヒューマン?」
俺がそういうと、男は小さく頷いた。意味を訳すと、『優秀な、最高位の人間』。
俺が?どういうことだ?
しかも、『恐れられる』って…。
「……それよりも、貴公の幼馴染が来たようだ」
彼は、廊下の奥を指で指した。誰かが、こちらに歩いてくる。三人、いや五人だ。学生服の少年が制服姿の少女を負ぶっており、その隣にはゴスロリ姿の背の低い少女。
そして、彼の幼馴染の友哉が白衣の男に肩を貸され、歩いていた。
「友哉っ!?」
すっかり忘れていたが、よかった、生きていた。
架月は彼らのもとへ走った。
「よぉ…架月サン…」
声に覇気がない。ふらついている。壁に腕を当て、体を支えている。支えがないと立っていられないみたいだな。何か、苦戦するほどの戦いがあったのだろうか。
「大丈夫か?何かあったのか?」
一瞬、友哉の目が泳ぎ、逸らされた。だが、すぐに視線が自分のほうに向けられる。やけに真剣な目つき。
やはり何かがあったみたいだ。
「…なあ、あんたら…。心葉さんが…今、大変なんだろ…?いってやれよ」
友哉が、三人に向けてそう言い放った。ゴスロリの少女はそういわれた途端、保健室に向かって走り出した。学生服の少年も、背負っていた少女を白衣の男に預け、彼女の後を追った。
「では、成一さん。私はこの子を何とかしなければなりませんので、あとはよろしくお願いします」
彼は、いつの間にか俺の後ろにいたフード男に向けて、浅く礼をし、会議室の手前にある階段を上って行った。
残された、三人。
友哉が、思い切ったように口を開いた。
「……架月、いいか…これから話すことは、…本当に重要なことだから。…よく、その頭に残しとけよ…」
——とある地下室。
中学生くらいの少年と、背が高く、ハーフと思われる青年が『獲物』たちを狩っていた。それはもう、ワルツを踊るように楽しげに、上機嫌に。
「ははっ…あははははははっはははははは」
少年が、血の海の中で、遺体の上で狂ったように笑う。それを見て、怯える『獲物』たち。ああ、面白い。その顔も、俺の下で無様に横たわる屑共も、全て。さあ、俺を楽しませろ、狂わせろ。
「…誓夜、やりすぎだぞ」
そういいながらも平然と、硬く、太いワイヤーで『獲物』の首を締め付け、頭にナイフを突き刺しながら言う彼も狂っている。
「その中に、総統の言ってたヤツがいたらどうすんだよ?」
息絶えた『獲物』をワイヤーからはずし、次の標的を狙う。
俺たちの目的は『最高作』の残りの三人を見つけることだ。
『aegis、ultimate、devil』
そうすれば、総統は俺たちを『苦しみ』から解放してくれる。
『苦しみ』、から。
続く