ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 刃  ( No.256 )
日時: 2010/03/03 15:54
名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)

Ⅱ.真実 前半

僕は金城心葉と申します。

…ああ、ここは僕の記憶の中と思ってもらって構いません。
少しだけ、僕の過去の『真実』というのをお話しましょう。長い長いお話になると思いますので、寝てしまわないようにお願いします。

では、開演です。

——ph対策委員会『華虎カトラ』。この委員会はパラマウントヒューマン(略してph)を排除するためだけに作られた、戦闘組織。
何故作られたかって?理由は簡単だ。
彼らは『存在してはいけない存在』だから。彼らの能力の中には、物質を消してしまうものや、物質そのものを別の物質に変えてしまうもの、天候を操ってしまうものなどがある。このままでは、人類が崩壊しかねない、そんなことからだ。

そこに、僕はいた。

僕の両親が偶々そこに所属していたため、僕は殲滅隊に入らされてしまった。根拠はわからないが、僕は何かしらの力を持っているかも知れないからだそうだ。両親は僕を行かせまいと、必死に委員会に抗議したが、無駄だった。

殺された。目の前で。

僕はそのとき生後間もない頃だったため、彼らの顔はほとんど覚えていない。どんな死に様だったかも覚えていない。

だから僕は愛を知らない。

これじゃあ、phと同じじゃないか。彼らも、家族の記憶は消去される。『最高作』以外は。何故かは知らないけど。
両親が死んでから、いつだっただろう。五、六歳のときだろうか、肉体強化用の薬を投与されるようになった。僕だけに。それはもう苦しくて、辛くて、拒絶反応が起こっても投与され続けた。何回も太い針が皮膚を破る。痛かった。けど我慢をした。痛いなら、言えばいいのに、僕は言わなかった。抵抗すればいいのに、しなかった。

僕の居場所は此処だけだから。

嫌われないように、捨てられないように、何にでも従って、ここに居続けた。

けれど僕は一度、彼らに逆らったことがある。
僕が十四歳のとき。委員会がある、とある企業の地下でだ。
ただ、人間じゃないと言われただけなのに、体が勝手の動いて、なぜか、人を何人も殺していた。人は殺してはいけないと言われていたのに。でも、楽しかった。楽しくて、仕方がなかった。どうしよう、止められない。この『狂気』を止められない。

だれか止めてください。『僕』を殺してください。

人間と、言って下さい。

「人間だろう?見た目も中身も」

そのとき、彼と出会った。

      続く