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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 刃 ( No.282 )
- 日時: 2010/03/12 22:27
- 名前: right ◆TVSoYACRC2 (ID: zuIQnuvt)
Ⅱ.真実 後半
『ニンゲン』…?
今、僕のことを『ニンゲン』って、言った。
でも、この『狂気』が止められない。ありがとうって言いたいのに、体が、彼を殺そうとする。
僕じゃない僕の右手が、落ちていた警備員の銃を掴み、目の前にいる彼に向けて、何発も発砲した。一発は肩を掠めたが、他の五発はすべて避けられた。強い。面白い。だめだ、殺すな。弾がなくなった銃を、僕じゃない僕の右手が捨て、近くにあった遺体に刺さっている先の鋭い鉄パイプを抜き、槍投げのように投げたが、間一髪で避けられる。
「おお…っと…危ない餓鬼だな」
苦笑い。
僕じゃない僕の歓喜が、次第に、『殺さなければならない』という焦燥に変化していく。
僕が僕じゃない僕に支配されそうだ。
止めてください。僕を殺さないとあなたも死んでしまう。逃げてください。
逃げないと、
『殺しますよ』
——能力を使い、心を読めば様子からして、この餓鬼はたった今、『狂気』に支配されたようだ。
「リュウ!!」
そう叫んだ瞬間、黒い影が自分の目の前に現れた。襟足まである、長い黒髪。黒のロングコートが印象的な細く、背の高い男。その手には日本刀。見た目は二十代ぐらいだろう。
「…何でしょうか」
「この餓鬼をっ…なッ…!?」
あの餓鬼が、自分の目の前にうつむくようにして立っており、俺のナイフをいつの間にか抜いていた。よく半袖から覗く細い腕を見れば、注射をしたような後があちらこちらにあった。長い、銀髪の髪。目にガが焼きがなく、痩せすぎて、頬が僅かにこけている。肌も妙に白すぎる。筋肉がなさそうな体に足なのにかなり。
速い。
そして、俺を見上げれば、悪魔のような笑みを俺に向けていた。
「…ボス!」
リュウが日本刀を抜き、俺を突き飛ばす。
「……!!」
リュウの目が赤く光った。
あれが、発動した。
続く
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