ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 刃  ( No.68 )
日時: 2010/02/06 12:46
名前: right (ID: zuIQnuvt)
参照: 『刃』はご覧のスポンサーの提供でお送りしています。by架月と友哉

Ⅶ.交差『クロス』前編


物語は、ついに交差した。


「…!」
立ち上がって、顔をパシリと手のひらで叩く。なよなよしてたら鍵は見つからない。自分から行動して、探して見つけるんだ。待っていても鍵から「ハイこんにちは」と歩いてくるわけがない。
それにしても、架月はどうして『鷹』って言うところにいるんだよ。まさか、仲間になったとか?‥‥それはないな。何か、理由があるんだよな。ああ、それよりも鍵を探さないと。
友哉は寝泊りしているビルを飛び出した。


——この臭い、病院‥‥?ちがう。でも、そういうところだろう。瞼が重い。開けようとしてもすぐに閉じてしまう。眠いんだろう、きっと。でも、右の脇腹の痛みが俺の睡眠の邪魔をする。痛くて痛くて、とてもじゃないけど眠れない。刺された場所を触る。少し、滲んだ血で温かかったが、処置がしてあった。
「お目覚めですか、『ミヅキ』のお兄さん」
え。
思わず目を見開き、自分の顔を覗き込んでいる、声の主を見つめた。今こいつ、『ミヅキ』って、言った。『ミヅキ』。そうだ、ミヅキを探さないと。アイツ、死んだはずなのに生きている。何で、何で何で何で。俺が包丁で刺したのに。血を大量に流して死んだのに。
何で何で何で何で何で何で何で。
吐き気がする、頭が痛くなる、傷が疼く。
イヤダアイタクナイ。アイタイ。アイタクナイ、アイタイ。アッテ、アヤマラナイトイケナイ。アイタクナイ、アイタクナインダ。デモ、アイタイ。
『たった一人の弟』だから。
『弟』。

コロシタノニ?

「‥‥ある一人の青年があなたを探しているといいました」
いきなり、声の主はまるで昔話をするようにしゃべり始めた。
「僕はそのとき、彼と交渉をしました。十月三日から十日までに『グングニル』の鍵を見つければ、あなたを殺さずに彼に引き渡す、とね。もしその期間中に見つけることができなければ、殺すと僕は言いました。そうしたら、彼は勢いよく外に走り出しましたとさ」
話のおかげで俺の心は一応落ち着いた。
彼、って友哉か。
‥‥あいつは面倒くさいことは嫌いで、すぐにやめてしまうし、簡単なことでもあいつは『気まぐれ』でやめてしまうこともある。どうせ「巻き込まれたくないから」って今、鍵なんか探してないんだろうな。
しかし。
気になることがある。こいつの言った言葉‥『ミヅキ』。なんで、見知らぬ人間が知っているんだ?友哉ぐらいしか知らないはず。俺の弟だって言うことも知っている。どうして。
俺は起き上がって男をにらみつけた。
「まあ、殺しはしませんけどね。急いでもらうための言葉ですから」

‥‥性格悪っ。

こいつはこほんと小さく咳をすると、ニコニコしている顔からやけに真剣な顔になった。
「‥‥あなたには、『ミヅキ』について話していただきたい。そのかわりに、我々、反テロ組織『鷹』があなたに全面協力します」
反テロ組織『鷹』。名前ぐらいは聞いたことはあるが、本当にあったとは。
「どんな協力だ」
「『ミヅキ』について、です。護衛も武器も用意しますよ」
まるで組織に入れって言っている口ぶり。
それにしても、ミヅキが何で反テロ組織なんかに‥‥一体、何が。
「ミヅキがあんたらに関係あるのか‥‥?」
彼を疑っているものの、半ばあきれ口調で一応聞いてみた。
「はい。彼はテロ組織『ドラゴン・スラッシュ』の最も重要な幹部ですから」
「は‥‥?何、いって」
そいつは俺の言葉をさえぎるように、言った。
「僕たちの日本を支配した者の一人です」

テロ組織の幹、部。

ウソだ。

       続く