ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 刃  ( No.98 )
日時: 2010/02/22 20:40
名前: right (ID: zuIQnuvt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=13503

嵐猫さんと十和のオリキャラが登場します!詳しくは参照を。

Ⅷ.VS『バーサス』中

ある商店街を友哉こと俺が駆け抜けていた。それはまあ、あれだ。敵らしき少女に追われている。短刀と銃を持ち、とにかく足が速い。気を抜けば追い抜かれてしまう。なぜこうなったのかは簡単に説明すると、鍵を探していたら突然現れて、「殺していい?」と聞かれて今逃げている。当たり前だ、誰でも逃げるわ。それにしても、この商店街の道が長い。まったく隠れる場所がない。ここを抜けて、小道に隠れて作戦を練りたい。
「うおっ」
銃から放たれた弾が俺の脚にぎりぎり当たりそうになったけどセーフ。
振り向いて少女がいるか確認するが、いない。どこだ、どこに。
「あはっ」
後ろから短刀で斬りつけてきた。すぐに右に避け、自分のナイフを二本構える。
「二刀流?めっずらしいオニイサン♪」
こいつ、強い。一筋縄じゃいかねえみたいだな。
ちょいと本気を…出そうか。
「!!」
思い切り地面を蹴り、少女に膝蹴りをくらわせる。倒れたところで顔にナイフを突き刺そうとしたが、その手を両手でふさがれる。
「ひっどーい、女の顔にナイフ?ありえないんですけど」
彼女は少し顔を歪ませながらも笑顔だ。
「そりゃドーモ…っと」
腹に右足の蹴りを入れられ、後ろによろめいてしまった。その隙を狙って少女は短刀を握り、友哉の右腕を斬り落とそうと短刀を一閃させるが、あっけなく避けられてしまった。しかし、掠りはしたようだ。服に血が滲んでいる。
「痛て」
友哉はまるで、痛くなさそうな口ぶりで呟いた。彼女にとってはとことんむかつくヤツだ。自分をなめている。そういうヤツ嫌い。殺してしまいたい。ぐしゃぐしゃにしてやりたい。泣かせて、その面を潰してしまいたい。

「わたしも本気、いいよね」

誰でもない誰かに何かを言っていたようだが、降りしきる雨のせいで聞き取れなかった。
「?」
そのまま、少女は動かない。これから何をしようというのか。
「わたしね、ううん。みんなね、化け物なの」
「!?」
少女の目が紅色に輝き、友哉を見た。その途端、体が動かなくなった。ナイフが両手から落ちる。何かに締め付けられているような感覚。
「あっ…がっ」
首が締め付けられている。何なんだよ、これ。苦しい。息ができない。頭がボーっとする。いけない、意識を保て。でも。息ができない。苦しい。声が、出ない。目の前が、ぼや、ける。何、も、考え…れ、ない。
「……その人を…離して…さもなくば、殺す」
今にも途切れそうな小さく幼い声。その声が聞こえたときには、体が動いていた。その場に崩れ落ちて、息を吸う。空気が体の中に入ってくる。
「はっ…ごほっごほっ」
けど、酸欠なのか頭がぐらぐらして気持ちが悪い。吐きそうだ。でも、今の声、誰だ。架月…があんな声、出せるわけない。てか出たらキモい、キモ過ぎる。
刃の、擦れ合う音が聞こえる。
顔を上げれば、少女が二人、刃物を持って戦っていた。多分、自分を助けたのはゴスロリの服を着た、小さな少女だろう。そちらの少女のほうが押している。
「っく」
自分を襲った、どこかの制服姿の少女はそばに落ちていた銃を拾い、ゴスロリ少女に向けて何発か放つ。だがそれを糸も簡単に避け、サバイバルナイフを逆手に持ち、制服少女の首に刺そうとしたが、しなかった。その代わり後ろに回りこんで、両腕を拘束し、体を地面に叩きつける。
「…捕まえた」
強い。自分よりは、かなり。
自分の視線に気づいたようで、こちらを向いて口を開いた。
「……別に貴方を助けたわけじゃない……心葉が…言った、から。…貴方を『鷹』に…連れてくるようにって…」
彼女がしゃべっているうちに、制服少女は何度か、抵抗しようともがいたが、体を再び叩きつけられ気絶する。ひでえな、おい。かわいい顔して実は凶暴ってヤツ…?恐い。うん、恐いね。
「で、何なんだよ。助けてくれたことは感謝するけど」
「架月は…殺さない、から…『鷹』に……入って」
…そういうことか。鍵が見つからないと判断したんだな。それにしてもよかった。架月は死ななくてすむのか。話からすると、この子は『鷹』のメンバーか。
「何で急に、そんな」
そうだ、急すぎる。いきなり仲間になれって言われても、正直困る。反テロ組織といえど、あんなことを言ったヤツだ。そんなに簡単に信用できるか。
「…こう言えば、わかる…と思う。『ドラゴン・スラッシュ』が動いた」
狩りが、始まった。そういう『意味』か。

『意味』もわかっている。

燃えてきた、久しぶりに。

やってやるよ。

         続く