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Re: 〜アビリティワールド 第1章 逃亡の果て〜 ( No.10 )
日時: 2010/02/01 16:38
名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)

4話  『テロ集団 ‘ARISU’』

「うっ!」
優太は丸く輝く球体の中から現れ、その場にこける。
輝く球体は、シャボン玉が割れるように消えた。
「こ、ここは・・・?」
優太が立ちあがり、周りを見渡すと、数キロ離れたところにペンタゴンが聳え建っていた。
どうやら脱獄成功らしい。
「脱獄は成功したけど、相変わらず暗いな。」
優太は暗雲で埋め尽くされた空を見る。
その空には‘平和’がまったなく、絶望感が溢れている空だった。
「てか、ここどこだ?」
優太は廃墟となった高級マンションの屋上にいた。
「これからどうしろと・・・・」

「オッス!」

優太は突然の声に後ろを振り向く。
優太の後ろには膝まである丈の長い黒いコートを着た男がいた。
「あんたが神宮優太?」
「あ、あぁ。」
男は優太に近づくとジロジロと優太を見る。
「ふぅ〜ん。能力は?」
「使えない。昔、ウイルスのせいで失った。」
「VXガス?」
「そうだ。それより君は?」
男はその言葉を聞くと眉をピクリと動かした。
「俺はアレック・シミオン。ボスがあんたを待ってる。ついてきてくれ。」
アレックの言われるがまま、優太はアレックについて行った。

**********

ペンタゴン 最上階 署長室

ペンタゴン日本支部の署長、工藤龍馬の目の前にはトレバーが立っていた。
工藤は署長椅子に偉く座り、トレバーを見ている。
「また逃げられたのか?」
「も、申し訳ございません!!」
トレバーは深く頭を下げる。
「ローラックス刑務所、ラットイスケイプ刑務所、そしてペンタゴン。彼は3度目の脱獄を成功させた。その内2つは君の失態だぞ。自覚はあるのか?」
工藤がトレバーを睨みつける。
トレバーは殺気を感じ、後ろに一歩下がる。
「逃がしたうえに、装置も壊し、君には失望したよ。」
工藤は立ち上がり、窓から外を眺める。
「今頃、あいつは世界のどこかで我々に復讐するために再び仲間を集め襲うだろう。君は、それがどれほど恐ろしいものか知っているのか?」
「は、はい。新聖歴の最後に奴らが政府に反逆していた時、私はいましたから・・・」
「それなら尚更だ。率直に言う。君はクビだ、トレバー・ヴァレンティーン。」
工藤のその言葉に、トレバーは絶望感と優太への恨みが積もった。
「そ、そんな!!待ってください!!」
「君には重すぎたようだ。早く出ていけ!!」
トレバーは反抗するのをあきらめ、渋々署長室から出て行った。

*********

廃墟

優太はアレックに連れられ、10階の奥にある1012号室にいた。
中には面会に来た早見鈴香、金髪ロングヘアーの女性。
少し顎が出て、二人とは違うオーラを出した巨体の男がいた。
「あれ?ティムさんは?」
「今はいないよ。用事があるって言って出て行った。」
鈴香はアレックにそう言うと、視線を優太に向けた。
「無事でよかったです。優太さん。」
「ありがとう。それより、あんたらは一体・・・」
「我々は政府に再び反逆するために集まった能力者集団。‘ARISU’というテロ組織だ。」
巨漢の男がその言葉を言った途端、優太の頭に過去の出来事が飛び交う。

「な、なに・・・!?」

優太はアレックの方を向き、胸ぐらをつかんだ。
「お前らのボスの名は!?」
「な、なんだよ急に!!」
アレックは驚き、優太と目を合わせようとしない。
「いいからボスの名前を言え!!」
「ティム・シャロンだよ!!」
「嘘つけ!!」
「ほ、本当だ!!」
アレックは涙を流しながら優太に言う。
優太はその瞬間、我にもどった。
「す、すまない・・・」
アレックは慌てて巨漢の男の後ろに隠れる。
「ど、どうしたの?」と鈴香が優しく声をかけてきた。
「いや、俺が中学生の時、その名のテロリスト集団が学校を襲ってね。もしかしたらと思って・・」
優太はその場にあった椅子に座りながらため息をついた。
「そうなの・・・。ごめんなさい、ボスの本名や素顔、性別は分からないの。」
鈴香の言葉に優太は唖然とした。
「何?」
「仮面で素顔を隠して、変声機で声を変えているの。男か女かもわからない。」
「そんな奴にあんた達は従ってんのか!?」
優太が鈴香に言うと、金髪の女性が前に立つ。
「あの人に会えば、あなたも従おうと思うわ。」
優太はその言葉に疑問を抱く。
「そんなに、ティム・シャロンという人間に従いたいのか俺にはさっぱりわからん。」
「あの方はどのような能力も使える。私たちが持っている能力もすべて。あの方は神よ。」
優太はその言葉を聞いて確信した。

おそらく、ティム・シャロンの正体は・・・・・




“高橋 七海”