ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜アビリティワールド 第1章 逃亡の果て〜14話更新♪ ( No.46 )
- 日時: 2010/02/19 20:14
- 名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)
15話 『ヒーローの終わり』
原子力発電所のすぐ外にあるヘリポートには、一機の中型飛行機とヘリコプターが止まっていた。
星風人は気絶した優太と七海の手に手錠をかけ、飛行機の貨物置き場に連れていく。
中には、サーカス団の団員やニックス達が手錠をかけられ適当に床に放り投げられていた。
優太と七海もその中に放り投げられる。
ニックスたちはノアとの戦いで傷ついており、ピクリとも動かない。
「これで全員か?」
星風人が隣にいる創造人に聞く。
「違う。あれを見ろ。」
創造人が後ろを指さす。
星風人が後ろを振り向くと、暴れているブラックバーンとチャールズを抱えた天骸人が来た。
「これで終わりのはずだ。」
抱えていた2人を床に放り投げた。
「ってぇな!!!もっと丁寧におけよ!!」
「行くぞ。」
「聞けこらぁ!!!!」
ブラックバーンが後ろで何か叫んでいるが、3人は貨物置き場から降りた。
ハッチが閉まると、ブラックバーンの叫び声も聞こえなくなった。
「操縦は誰がする?」と星風人は2人に聞く。
「操縦はあと一人でいい。操縦の一人は雨水神がやる。」
天骸人はそう言うと、一人でヘリコプターに向かう。
「お、おい!!」
「私はノア様の横にいなければならないのだ。」
**********
ヘリコプターの中には鈴香とノア、包帯を巻いた天地人と太陽人が座っていた。
「怪我の様子は?」とノアが二人に尋ねる。
「大丈夫です。それより、そろそろ出発した方がいいのでは?」
天地人がノアに聞くと、ノアは腕時計に目を移す。
時計は12の数字をあと数分で指すところだ。
「行こうか。」
ノアがそう言うと同時に、天骸人が乗り込み操縦を始める。
「離陸します。」
そして、ヘリコプターと飛行機は日本の地を離れた。
**********
ヘリと飛行機がアメリカに向けて飛んでいると、2機のステルスが通り越して行った。
その光景を飛行機を操縦していた星風人と雨水神は眺めている。
「日本も終わりだな・・・・」
星風人がつぶやく。
「少なくとも、関東は跡形もなく消えるだろう。」
神はそう言うと、モニターに異変があることに気付いた。
「おい。右翼部分のエンジン、燃料漏れてないか?」
「は?」
星風人はモニターに目を向ける。
確かに、右翼部分の下にある2つのエンジンが赤く点滅している。
「・・・なぜだ?貨物置き場にいる連中はちゃんと拘束してるんだろ?」
「あぁ。メンテナンスはあったんだろう?おかしいな。」
星風人は席を立つ。
「操縦を頼む。見てくるわ。」
「分かった。何かあったら連絡してくれ。」
神がそう言うと、星風人は頷いて操縦室を後にした。
**********
一方、飛行機の隣を飛んでいるヘリコプター
ヘリコプターの中はこれといった会話もなく、天骸人が操作する音だけが響いていた。
しかし、その沈黙を破るようにして突然轟音が鳴り響く。
「大統領、攻撃が始まりした。」
「わかるよ。」
大気が揺れ、ヘリコプターが大きく揺れる。
「これで、終わったんだな・・・・」
「・・・・・」
太陽人が天地人に言うが、天地人は怪訝な表情をしている。
「どうした?」
ノアが天地人に問いかける。
すると、天地人は立ち上がり飛行機の方を向いた。
微かだが、飛行機の右翼部分の下のエンジンから燃料が漏れているのわかる。
「・・・・バーカスは捕獲したか?トレバーや岩野の安否は?ペンタゴン日本支部から逃げ出した受刑者は全員殺したか?」
天地人が天骸人に聞く。
しかし、天骸人は天地人の変わりように唖然としている。
「大統領!!」
「私は知らない。」
天地人は飛行機を睨みつけると、窓を思いっきり叩いた。
「誰だ!!正義を脅かすものは・・・・」
**********
飛行機 貨物置き場
意識を戻した優太は、体を必死に動かして壁にたどり着いた。
「ハァハァ・・・・」
壁を伝って立ち上がると、ニックスたちや団員達が優太と同じ姿で倒れていた。
「捕まったのか・・・・・」
「そうだよ。神宮優太。」
ブラックバーンが優太に言う。
「お前、生きてたのか・・・」
「俺は不老不死だ。忘れたのかよ。」
ブラックバーンは辺りを見渡すと、隣にいるチャールズに話しかけた。
「どうにかできないのか?」
「無理だ。手錠には能力が使えないようにA波が流れている。」
チャールズはそう言うと、その場に寝そべった。
「いいじゃないか。アメリカを満喫しよう。」
「黙っとけ。オンボロ・・・」
ブラックバーンはため息をつくと立ち上がった。
「はぁ。一体どうすれば・・・」
ブラックバーンがつぶやいたその時だった。
『ハッチが開きます。乗組員は退却してください』
放送とともにハッチが開く。
「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ブラックバーンとチャールズは悲鳴を上げて壁にしがみつく。
「うぐっ!!」
優太も七海を足で固定し壁に寄りつく。
「あっ!!」
優太の目の前に倒れていたニックス、エイミー、アレック、団員達の体がハッチに向かう。
「どうにかできないのか!!」
「無理だ・・・あぁーーー!!!」
ブラックバーンは一瞬力を抜いてしまい、あっという間に外に放り出された。
「ブラックバーン!!!!うおっ!!!」
チャールズも一気に外に放り出された。
2人の姿は雲の中に消え、それと同時に次々と空中へ放り出される。
「やばい・・・・」
優太がそうつぶやいた瞬間だった。
ニックス、エイミー、アレックも空中に放り出された。
「あぁ!!そんな!!!」
3人の身体は別々の方向に雲の中へと消えた。
優太はその瞬間、絶望と悲しみで一瞬力を抜いてしまった。
「しまった・・・・」
そう思った時には、優太と七海の身体は空中にあった。
優太の目の前から七海が離れていく。
「な、七海!!」
七海は未だに気絶しており、このままだと奇跡が起きない限り地面にたたきつけられ死んでしまう。
「七海!!やだ!!七海!!!!!!」
七海の姿は雲の中へ消え、優太も雲の中へと消えた。
周りには飛行機のエンジン音が鳴り響く。
こうして、数十名の能力者は太平洋→アメリカの航路の途中で落下していった。
第1章 終了______
〜第2章 絶望の鎮魂歌〜
0話 『風姫』
日本 神奈川県
ステルスで追撃された翌日の神奈川。
神奈川県は廃墟となり、所々では火事が見える。
そんな神奈川の姿を崩れた廃墟から眺める風代郁。
「高橋、神宮・・・・」
郁はそうつぶやくと、その場から風のように消えた。