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Re: 〜アビリティワールド 第2章 絶望の鎮魂歌〜16話更新♪ ( No.61 )
日時: 2010/03/09 14:30
名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)

17話   『最後の歌姫』

アメリカ ワイオミング州

天地人、太陽人、神谷屡婁はチェ・リンの住むアパート2階に来ていた。
「んー・・・・・。しかし、いるんですかこんなところに?脱獄犯の人間が。」
屡婁が二人に聞くと、太陽人が頷く。
「能力者は何を考えるか分からないんだよ。まあ、我々もそうだが。」
太陽人と屡婁が話していると、天地人がドアノブに手をかけた。

ガチャ

カギは掛っておらず、ドアは簡単に開いた。
「・・・不用心だな。仮に脱獄犯の身なのに。」
天地人はそう言いながら家の中に入った。
二人も後に続いて土足で入る。
部屋の中は、失明している人間とは思えないほどきれいだ。
部屋は全部で三つあるが、一つの部屋にしか荷物が置かれていない。
天地人は部屋の中に入ると、机の上に無造作に置かれたファイルや資料を見る。
ファイルを開くと、中には写真やメモ用紙が多く挟まれていた。
‘ローラックス刑務所崩壊の件’
‘ラットイスケイプ脱獄の真実’
リンが調べていたと思われる資料はどれも優太が関わっている事件だ。
「今さら、何を調べているんだ?」
隣で見ていた太陽人がつぶやく。
天地人が次のページを開くと、聞いたことがない言葉が書かれていた。
「最後の・・・歌姫・・・?」
メモ用紙にはそう書いており、周りには星風人、優太、トレバー、ノア、天地人の写真が貼ってある。
「なんで、お前や星風人の写真が?」
「・・・このメンバーは、ラットイスケイプ脱獄の事件があった時、ラットイスケイプにいたメンバーだ。だが、星風人は・・・」
天地人は頭を捻る。
なぜ、こんなことをリンは調べているのか?
関係のない星風人の写真があるのか?
最後の歌姫とはなんなのか?
天地人は資料とファイルを屡婁に渡す。
「これをFBIに届けろ。」
「わっかりました!!」
屡婁が家を出ようとしたその時だった。

「きゃあああああーーーーーーーーーーー!!!!」

家の外から悲鳴が上がる。
3人は顔を合わせ、リンの家を飛び出した。
大通りにの真ん中に、血まみれとなっているリンが倒れていた。
「チェ・リンだ!!」
天地人は叫ぶと、倒れているリンに駆け寄る。
リンは腹に大きな穴をあけ、肺、肝臓、腸が破損していた。
「嘘だ・・・・」
屡婁は初めて見た残酷の人間の死体に唖然とする。
リンは出血多量ですでに死んでいた。
「誰が殺したのだ・・・何のために・・・・」
3人は愕然とした。
そして、数分後に救急車の音が辺りに響き渡った。

**********

太陽の真ん中 名もなき孤島

優太が孤島にたどり着いた翌日、優太は浜辺に腰をおろしていた。
「みんな・・・・大丈夫かな・・・・」
優太はどこかへ落ちていった仲間の顔を思い浮かべる。
七海も、アレックも、ニックスも、エイミーも。
もしかしたら死んでいるかもしれない。
「うっ・・・うっ・・・・・。」
優太は涙を流しながら悔しがる。
なぜ、能力者がこんなことに遭わなければならないのだ。
数十年前までは平和だった。
それもこれも、すべてが悪い方向に向かったのは一人の男のせい。
「ノア・・・エーオース・・・・」
優太はノアの名前を呟くと、空を見上げた。
ほかのメンバーも生きてこの空の下にいればいいのだが・・・。
優太はそう強く願う。
すると、いつの間にか優太を助けた老人が隣に座っていた。
「もう、大丈夫なのか?」
「はい。ありがとうございます。」
優太は老人にお礼を言う。
「何があったか知らんが、頑張れよ。」
「え?」
優太が老人の方向を見た瞬間だった。

ビュン!!

突風が吹き、砂が舞う。
優太は老人の目の前から一瞬で消えた。
「神宮優太君、君の未来は・・・変わるぞ・・・・」
老人はそう言うと、笑顔で水平線を見つめた。