ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: キミシニタモウコトナカレ ( No.7 )
- 日時: 2010/01/23 13:54
- 名前: right (ID: zuIQnuvt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=13433
第一記[序]①
『仲間』がまた、いなくなった。
少女が慰霊碑の前で一人、たたずんでいた。
「『仲間』って‥‥‥なに」
そいつは俺にそう問うた。
彼女は『実験』のせいで、あらゆる感情を失い、成長することを許されない体になってしまった悲劇のオンナノコ。
「仲間、ねえ‥‥‥」
「ロイ、ド‥‥には‥わか、らない?」
わかるよ。でも、お前にはまったくわからないだろうから、言わない。お前がわかるようになるまで、教えない。
「わからないのがわからないってやつ」
「‥‥」
それ以上、彼女は何も聞かなかった。
「おはようございますであります、オルト少佐」
オシュへグ・ヘブンの本部の食堂で上官と向かい合う形で食事をすることとなった、中尉昇進五日目。
「上官に対して何だ、そのあいさつは」
すぐに指摘される。正直、うざい。ま、だれでも、どんな上官でもそう感じるでしょうねえ。ははは。
「いいじゃないっすか、歳も近いんだし」
ちなみに俺、二十歳。オルト少佐は二十四歳。結構近い。
「‥‥フン」
相変わらず、姉弟そろって厳しいんやら冷たいんやら。
「‥‥あー、そういえば」
昨日、町の結界を調べたときに彼は誰も知らないはずの情報を手にしていた。
「何だ」
「町の守護結界の効果範囲が狭くなってきているようです。そのせいでか、んー‥と、町の死者が昨日までに十三人、負傷者が八人出ました」
オルトは目を見開く。 そして、彼の声が小声になった。
「‥‥どこで手に入れたんだ、その情報」
本来ならば、上層部しか知らない情報だ。そんな情報を一体どうやって。
「一応、俺、ブラッティ家の長男なんすけど」
「関係ないだろ」
ブラッティ家とその情報はまったく関係ない。かすりもするはずがない。馬鹿か、こいつは。
「いや、そうでもないかもー」
最近、部下がうざい。
「もうすぐ任務が来る時間帯だ。早く支度をしておけ」
腕時計を一瞥し、立ち上がる。
「了解」
「それと、その情報は俺意外に誰も話すな。もし、その情報が人々に知られてみろ。町はパニックだ」
俺は返事の代わりに右目をウインクした。
[序]②へ続く