ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 2072.1.29 【オリキャラ募集開始ダ】 ( No.18 )
日時: 2010/01/30 10:48
名前: 黒神 恢羅 (ID: kSzpUasK)

Stage02 「Break Down」

その後も俺はいつもと変わらない時間を過ごし、何事もなく学校は終わった。
「椋絽ー!! 早く帰ろう?」
鞄に教科書をしまっていると後ろから聞いたことのある声が聞こえた。
「あ? 氷花?」
俺はいきなりの氷花の出現に情けない声で答えた。
銀髪の長い髪を揺らす碧眼の少女は隣のクラスの城井 氷花である。
俺の幼馴染でもある氷花とは結構長い付き合いだ。
「焔君、風邪引いちゃったんでしょ? 早く帰ってあげなきゃダメじゃん」
そう言って俺の腕を掴み教室を出た。

「寒っ。てか雪降ってるし」
俺はマフラーの隙間から入る冷たい風に身を振るわせた。
しっかし、なぜ急に氷花が?
アイツとは仲が悪いわけではないが、高校に入ってからはあまり話さないような仲だったのに。
急に一緒に帰ろうなどと言い出したのだろうか。
不自然な点が多すぎる。
それにこの胸騒ぎは何なんだ?
「……椋絽? どーしたの、黙り込んじゃって」
目の前にある氷花の笑顔はいつもと変わりなく明るかった。
だが、俺の中に広がる不信感は消えることがなかった。
そんな事を考えているうちに気づけば家の前に着いていた。
「……あがれよ。お茶でも飲んでったらどうだ?」
そう言うと氷花は明るい笑顔を浮かべ「じゃ、おじゃましまーす!!」と家に入っていった。

「あれ? 氷花さん?」
廊下から聞こえる焔の声。
風邪のせいか咳き混じりなのが分かる。
「アイツ、寝てねぇと治んねぇだろ」
俺は靴を脱ぎ捨て奥に進もうと足を踏み出した。
その時だった。

「兄貴っ!!」

俺を呼ぶ必死な弟の声に物の割れる大きな物音。
俺の胸騒ぎはこれだったのか!?

「大丈夫か!! 焔、氷花……」
俺は次の瞬間自分の目を疑った。
目の前に広がる光景、それは焔達を襲う泥棒でも何でもなかった。

焔を襲う“氷花”の姿だった。
「お前、なん……で」
あまりの衝撃に俺の口から出るのはそんな弱弱しい言葉だった。
焔を抱きかかえるようにして窓の桟に足をかける氷花は不敵な笑みを浮かべ言った。

「ボスの命令だから」

いつものあの、明るい声とは比較的にとても冷たい声でそう言う。
「焔を、どうするつもりだよ」
鼓動が速くなる。
額からは大量の汗が流れる。
「さぁ? ボスはただ天翔 焔を連れ去って来い、としか言ってないからね」
そう淡々と話す氷花に俺は近づく。
なんとか焔を救い出せないだろうか。

「やめなよ。地獄を見ることになるよ。この子も椋絽、アンタも」

そう言って氷花は窓から姿を消した。
「くそ、くそぉぉ!!」
何も出来なかった。
目の前で助けを求める焔を、救えなかった。
自分の非力さに虫唾が走る。

「絶対に、助けてやるから……」

待ってろ、焔。