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Re: 2072.1.29 【オリキャラ募集中】 09 up ( No.51 )
日時: 2010/02/09 19:43
名前: 黒神 恢羅 (ID: dj1cLQBV)

Stage10 「Light」

一体、何が起きてるというんだ。
俺は突然の出来事に混乱していた。
突如、倒れこんだ教え子はいくら呼びかけても返事をしない。
死んじまったかと焦った。
「……脈はある。意識を手放しているだけだろう」
朱雀のその言葉に俺は安心のため息を漏らした。
「起きろー」
俺は椋絽の頬を軽く叩いてみた。

「何をする。無礼者が」

突然目を覚ましたかと思うと、椋絽は思ってもいなかった言葉を口にした。
「……は?」
その場にいた敵味方、全員がポカンと口を開けていた。
「……お前、椋絽……なのか?」
魁斗は引きつった笑顔でそう問いかけた。
すると椋絽と思われるソイツは、鼻で笑い一言。

「お前は馬鹿か」

カチーンとくるその言い草に魁斗は握り締めた拳をそっと押さえ込んだ。
そしてまじまじと椋絽の顔を見つめた。
そして気づく。
一つ、いつもの椋絽と違う点に。
「目の色が、違う?」
俺が口に出す前に答えたのは氷花だった。
さっきまで戦っていた敵達も今は状況を窺っている。
そう、椋絽のいつもなら黒い瞳が今は金色に輝いていた。
まるで、あの希望の蝶のように。
そこで朱雀は何かに気がついたように目をハッと開いた。
「もしや……今、俺達が会話しているのは、椋絽じゃなく、希望の蝶……なのか?」
その答えに椋絽は満足そうに笑みを浮かべた。
まあ、正しく椋絽の中にいる希望の蝶だが。

「朱雀、といったか? 正解だ。お前はそこの馬鹿と違って頭が回るようだな」

二度目のカッチーンに襲われ、俺はぎりぎりと拳を握り締めた。
それはもう、肉に爪が食い込むぐらいに。
「……で、希望の蝶様は何用で椋絽の意識を乗っ取ったんすか」
額に浮かぶ怒りマークを隠しつつ、俺はぎこちない笑顔で訊く。
「俺の宿主である椋絽の身に危険が迫ったのでな。ちょっと出てきてみた」
きらっきらの笑顔で答える希望の蝶。
その笑顔はどこか俺を見下していた。

「それと、俺の事を希望の蝶と呼ぶのは止せ。俺の本当の名前はシュリ・ライトフォア。蝶といっても名前ぐらいある」
希望の……言い改め、シュリはそう言った。

しかし、何かがおかしい。
いつもの俺ならいくら希望の蝶であれ、あれだけ馬鹿にされれば殴りかかってもおかしくない筈なのだが、今はどうも彼に逆らえない。
これが、希望の蝶の威力の強さってことなのか。

「……忘れていた。おい、お前ら」
シュリは氷花達に顔を向け、話しかける。

「……俺は宿主であるコイツを傷つける者は誰とて許さんぞ。早々に去れ。言うことが聞けないというならば……今、ここで潰してやろうか?」

シュリの瞳が怪しく光るのをその場にいた全員が感じた。
そして何ともいえない恐怖を俺は感じていた。
奴らもそれを感じ取ったのか、舌打ちを残し、去っていった。

「よし。俺の用事は終わった戻らせてもらうかな」

こちらが質問する時間も与えずにシュリは椋絽に意識を手渡した。
意識が手放し状態になった椋絽の身体を支え、俺は静かに呟いた。

「俺は、夢でも見ていたのかな」

この時は、あの朱雀でさえ目が遠くを見つめていた。