ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 2072.1.29 【Episode02】  ( No.57 )
日時: 2010/02/19 19:49
名前: 黒神 恢羅 (ID: dj1cLQBV)

Stage12 「Determination」

あの紅い光景を見てから俺は、数日間食事も喉を通らなかった。

葛木 暁の言った通り、日本はあの放送のせいで大パニックを起こしていた。
そして能力者同士の戦いも各地で起こっていた。
その結果たった一週間にして日本での死者は一万人を超え、完全に日本は壊れ始めていた。
俺や先生、朱雀さんはしばらくの間安全確保のために研究所施設内で過ごしていた。
つまり、あの血で染まった最悪の殺人現場で過ごしているということ。
亡くなった研究員達の身体は見れるものではなく、俺達はその身体を一つ一つ集め、家族に渡し歩いた。
泣き崩れる家族の姿を見るたびに胸が強く痛んだ。

……それに、未だ奴ら、暗闇のサーカス団は焔を預かっている。
あれ以来奴らが顔を出すことも連絡を寄越すこともない。
つまり焔については何も解決していないということだ。
こんな中、明るく振舞える訳もなく、俺はただ毎日息を吸って生きているだけだった。
先生や朱雀さんはよく話しかけてくれるが、その優しさに気づきながらもまともな返事を返すことは未だに出来ていない。
そろそろ立ち直らなきゃという気持ちばかりが先走って空回りしているのが今の俺の正直な状況。

「……椋絽。そろそろ、行動を起こさなきゃいけないんじゃないか?」

そう突然言い出したのは先生だった。
朱雀さんもその意見に頷いた。
確かに、このままでは俺の……いや、俺達能力者のせいで日本が破壊させてしまう。
それは、避けたいことだった。
でも、どうする?
いくら希望の蝶が俺の中にいても、俺は何も出来ないままだ。
何も出来ず失っていくだけ。
そんな自分に何が出来るっていうんだよ。
黙り込んでいる俺を見かねて先生が口を開く。
「椋絽、俺が前にお前に協力すると言ったのを覚えてるか?」
俺はコクンと頷いた。
「俺は何を手伝うと言った?」
俺は少しの沈黙の後、顔を静かに上げる。

「焔を……助けること……」

そうだ。
俺の目的は焔を助けること。
それだけだったはずだ。
いろいろあり過ぎて頭が混乱していたが、今やっと先生の言葉で思い出した。

やってやるよ。
焔を助けるためなら、暗闇のサーカス団を潰すのも、
α、葛木 暁を殺すことも……
焔を救えるなら、
何だってやってやる。

「先生。ごめん。いろいろ混乱してたみたい」
そう言って俺はいつもの笑顔を浮かべる。
その表情を見て、安心したかのように先生と朱雀さんはため息を落とした。
「なら、お前のやることは決まってるよな?」
「決まってる」
俺は座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、言う。

「俺はあいつらを全員ぶったおして、焔をそして日本を救ってやる!!」

なあ、シュリ。
これが俺のすべき事で、合ってるよな?
何でお前が俺を宿主としたかなんて分かねぇけど、
協力、してくれよ。
俺は一人そう心で呟き、
歩き出す。

「先生、朱雀さん。手伝って、くれるか? 狂っちまった俺の日常を元に戻すことを」
二人は静かに笑みを浮かべ頷く。
「もちろん。お前はいつまーでも俺の手のかかる生徒だからな。教師が生徒の面倒見んのはありまえだ」

「ここまで関わっておいて、今更引き下がる訳がないだろ? 最後まで付き合ってやるさ」

俺は歩み出す。
止まっていた時を動かし俺は進む。

先に何があろうとも
立ち止まりはしない。

目的を達成するその瞬間まで
俺は決して諦めない。

止めてやる。
暗闇のサーカス団もαも……
そして氷花も

全て俺が元に戻してやる。