ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 2072.1.29 【Episode02】  ( No.60 )
日時: 2010/02/21 14:40
名前: 黒神 恢羅 (ID: YAFo98qW)

Stage13 「Request」

パニックによってあの賑やかな東京の町並みは姿を消した。
外に人気はなく、道路の所々に生々しい血の跡が残っている。
「いいねぇ。こーゆー景色ぃ」
悠ちゃんが嬉しそうに目を細め言う。
僕は外の景色を眺めながら静かにため息を落とした。

ここは何らかの会社が使用していたビルの一室。
今はあの放送のパニックによって人気は全くない。
だから現在ここは、僕ら“暗闇のサーカス団”の集合場所となっている。
ついさっきαからの連絡によって僕ら幹部と各グループの隊長は集められた。
「集まった?」
αが社長用の椅子に腰掛けながら微笑む。
僕らは目の前に現れたαに深く礼をした。
「ご用件は何でしょうか」
氷花さんがαにそう問う。
彼女は昔からαの下で働いていた、古株だ。
確か……彼女が十歳の時からだったかな。
まあ、どうでもいいけど。
「今回はある人物達の排除に向かってもらいたいんだよ」
αが笑顔を崩さぬまま淡々と話す。

「ある人物ってのはこれから言う四人のこと。二人は椋絽くんの近くにいる魁斗と朱雀、もう二人は椋絽くんと交流のあった能力者の日笠 夕凪(ヒガサ ユウナギ)とその双子の妹、日笠 朝凪(ヒガサ アサナギ)」

その場にいた全員が聞いたことのあるその名前に目をハッと見開いた。
「まさか、“七星”ですか!? 夕凪と朝凪って言ったら七星、最強の二人では……」

七星……。
僕も一度聞いたことがある。
能力を持った最強の軍団。
日本国家の元で罪人の排除をしている国家の番犬。
人数は百を易々と超え、その中でも夕凪、朝凪の兄妹は最強と謳われている。

「寿、それに氷花とAグループは魁斗、朱雀を。悠、緩、BグループとCグループは夕凪、朝凪を。よろしく頼んだよー」
その言葉に僕らは返事を返し、各々準備に取り掛かる。

「寿」

ふと名前を呼ばれ、僕は手招きをするαに近づく。
「君に頼んでおくことがあるんだ。一つ、なるべく椋絽くんに精神的な大きなダメージを与えておいて。それと、もう一つは——」
耳元で呟かれた二つ目のお願いに僕はαの顔を見つめた。
その顔はひどく歪んだ笑顔を浮かべていた。

背筋にゾッとするものを感じ、僕は礼をしてすぐに準備をはじめた。

αは本当に恐ろしい人だ。

いや、人じゃないのかもしれない。
悪魔、その名前のほうが彼に似合う。

笑顔の裏に歪んだ思い。

でも僕は

だからこそαに惹かれたのかもしれない——