ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 2072.1.29 【Episode02】 13up ( No.70 )
- 日時: 2010/02/26 22:46
- 名前: 黒神 恢羅 (ID: 7rpLseUw)
Stage15 「BrotherⅠ」
夢を見た。
あれは、幼い頃の自分。
そして近くで笑っていたのは……
俺の大切な、弟。
「先生!!」
椋絽の声で起きた俺は、髪を整え腕時計に目を向けた。
時刻は午前六時ちょうど、いつもならまだ眠っている時間帯だ。
俺は何かあったのかと椋絽に尋ねた。
「椋絽、やけに早い起床だな。何かあったのかよ」
そう聞くと椋絽は「会いたい奴らがいんだよ」と短く答えた。
ああ、これは訳ありだな。
椋絽の表情は明らかに気まずそうで、朱雀も同じような表情をしていた。
「で、どこへ? 誰に会いに行くんだよ」
俺がそう問うと、引きつった笑顔で答えた。
「ちょっと、七星のアジト……まで?」
七星……七星!?
俺は自分の耳を疑った。
コイツ、今七星って言ったよな?
なんでコイツがそんなとこにいる奴に用があんだよ。
俺は寝起きで未だに活動していない頭を無理やり起こし、フル回転させた。
いた。
二人、七星で椋絽に関わっている奴が。
「まさか、夕凪と朝凪か?」
俺の問いに椋絽達は頷いた。
俺は大きなため息を落とす。
よりによってアイツらかよ……。
俺はあまり、というか、完全にアイツらが苦手だった。
何故か、それは俺がまだ教師なったばかりの頃、ちょうど三年前か。
今の椋絽と同じ年だったアイツらに散々とやらかされた。
あまり、思い出したくないな。
俺は昔の記憶をすぐに消し去った。
「で、なんで急にアイツらに会おうなんて思った訳?」
椋絽は朱雀と目を合わせてから話し始めた。
「俺、思ったんだけどさ。敵の本拠地が分かったって言っても、こっちの戦力は相手に比べたらゼロに等しいだろ? だから、夕凪達の力も借りようかなぁって」
まあ、正論だろう。
この三人で本拠地に突っ込めば、
一瞬で全員死亡確実だ。
なら、
少しでも戦力を増やしておくことは良いことだろう。
俺はアイツらに会いたくないという本音を飲み込み、二人と共に七星アジト、東京東第一高校へ向かった。
東第一高校はだいぶ前に廃校となり、何年か前から七星が使用している。
俺らがいる現在位置から車で約三十分、そこに七星アジトはあった。
「着いたか」
朱雀の言葉で窓の外に目を向ければ、廃校とは思えないほど近未来化した建物がそこにあった。
「すげぇー」
椋絽は素直に目の前の様子に感動していた。
いいな。子供は楽で。
そんな事を思いながら、俺は入り口に立ち呼びかける。
「すみません。日笠兄妹に会いにきました。え? お前らは誰だって? 椋絽という名前を出せば分かると思いますー」
俺は適当にそう答え返答を待った。
「……入っていいってさ」
さすが椋絽。
変なときに役に立つ。
まさか俺も、一発でココに入れるとは思っていなかった。
なんせ、指紋センサー付き完全ロックの門だからな。
門を潜るとすぐ先に二つの人影が見える。
「先生、あれって夕凪と朝凪じゃない? あ、手振ってる。間違いない」
そう言うと椋絽は走り出し二人に抱きついた。
「久しぶりだな、椋絽。元気にしてたか? 魁斗にいじめられてねぇか?」
夕凪がその金髪ピアスのヤンキーな見た目とは正反対の優しい声で言う。
「背、伸びたね!! いやー相変わらず可愛いなぁ」
朝凪もそう言って椋絽の頭を撫でる。
周りん奴ら目を丸くして驚いてんぞ、椋絽。
俺は軽くげんなりして三人の様子を眺めていた。
普通に見れば仲睦まじい友人達の光景。
三人の事情を知っている人間が見ればある意味恐ろしい光景。
げんなりしても仕方ないだろう。
「にしても」
夕凪が椋絽を可愛がるのを止め、周りを見渡す。
「静かすぎるな。何かあったみてぇだ」
その言葉に朝凪も頷く。
「だね。ここ以外の場所で人間の生気がない」
その場にいた全員の表情が引き締まる。
「来る」
夕凪が腰から彼の能力の仲介となっている拳銃を抜き、構える。
朝凪は彼女の能力である防御バリアを張った。
ひどい金属音が鳴り響き、俺や朱雀も武器を構え椋絽の前に立った。
「やっほー。って、あれ? 椋絽ちゃんじゃん?」
聞いたことのある声。
これは、悠……の声だ。
そして悠の後方にもう一つの影。
緩だった。
「血の匂いがするぜ、お前ら。……ココの奴ら何人殺しやがった?」
夕凪が眉を寄せ訊く。
「んー何人だろう? ね、緩」
緩は長い髪を揺らしながら答える。
「お前ら以外の全員だ」