ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 熱血教師と死神様 ( No.12 )
日時: 2010/03/01 12:51
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第05話

ピタリと風が止まっていて
いつの間にか夜になっていた。

「…片付いた。」

本棚にきっちりと本を並べて、
達成感で胸がすっとするように暗示をかけた。

『何もできないくせに—…!』

あの時の、北条の叫び。
…夢に出た北条そっくりの人もそう言っていた。
俺は何もできないのかな、無力なのかな…?

「おぉ、結構片付いたなぁ。」
「高彦さん、意外と綺麗好き?」

ドアを勢いよく開け、
大阪ッ子2人が入ってきた。

「これ、差し入れ。」

純が紙袋の中に手を突っ込んだ。
何かを探しているようだ。

「もー、あれほど整理して入れろ言うたやろ!」

「っさいなぁ…。」

眉間にしわを寄せ、純は呟く。
何かを探る手は急に止まった。

「コレコレ、クリームパン。
 今日はコレが高彦さんの晩飯!!」

ナイロンの袋に手のひらサイズの
クリームパンがぎっしりと入っていた。

「ちっこいくせに結構旨いんよ。」

「ありがと、助かるよ。」

「やべ、もうこんな時間。
 早く帰らないとチビラム来るぞ。」

純は春の背中を押して急かした。
そそくさと部屋を出る春を確認してから
純は俺の耳元で囁いた。

「…紫堂のことは気にせんでえぇ。
 ……俺たちが何とかするから…。」

それだけ言うとすぐにドアノブに手を伸ばして

「明日の授業よろしく。
 あんまし頭良くないから、お手柔らかに。」

頭を指さして、純は部屋を去って言った。
彼らから貰ったパンを口に入れる。


——よく考えたら俺って人に頼ってばかりだ。
このパンも、北条のことも…。

『貴方はあの子を守れない。』
『何もできないくせに。』

無力な自分。解決してくれるのは自分以外。
…夜は嫌いだ、自分の悪い所ばかり見つけてしまう。

「強くなりたい…。」

一人で呟いた。
拳を強く握って、ゆかを殴りつけた。
こんなんじゃ北条を守れない。
俺はまだまだ未熟だ…。

壊れていく俺の心に五十嵐さんの声が響いた。

「貴方のことを信頼している。」−…

俺のポジティブ思考は始まった。

そうだ、俺は『信頼』されていた。
過去のことなのかもしれないが…。

俺は1度北条を『信頼』させた、『笑顔』にさせた。
それぐらいの力を俺は持っている!

俺は強くなれる…。
拳を上に突き上げた。

「強くなって、守ってやるから!
 あの時みたいに、笑顔の北条にしてやるから!」

少し照れくさかった。
でも、本気でそう思ってる。
恥ずかしくなんかない。


気がつけばもう深夜の1時。
俺は布団の中にもぐった。
電気を消すと、自分の血液が体に流れる音がした。


…誰かのすすり泣き声が聞こえたのは気のせいか?