ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 熱血教師と死神様 ( No.13 )
- 日時: 2010/02/09 17:48
- 名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)
番外編
真夜中。
私は何も考えないようにする。
…夜は悲しい時間だから。
きっと、春も純も寝ているだろうな。
なんだかとっても暇だ…。
皆の部屋がある校舎裏を
一人歩くのは久しぶりだ。
だって、ココを歩くのは嬉しいことがあった時だけ。
しばらく嬉しいことってあんまりなかった。
あの人の…。『お姉ちゃん』せいで。
「あーぁ、私の馬鹿。
なんでやなこと思い出しちゃうのよ!」
左目の上に巻かれた包帯の上に手を押しつける。
キリキリとする痛みは強く、悲しい気持ちが
おさまっていくのを感じた。
…窓から光が見える。
ココは…。高彦の部屋?
「ふふ、パンなんか食べちゃって…。
あそこのクリームパン美味しいのよね。」
私は呟いた。
高彦に話しかけるかのように。
窓を覗くと、真剣な顔をした高彦がいた。
さすが熱血教師。
明日の授業のことでも考えてんのかな?
「強くなりたい。」
高彦の口からそんな言葉がこぼれた。
床を強く強く殴りつける高彦が見える。
『強くなりたい』—…。
私と同じこと思ってる…?
私は壁にもたれ、
背中をこするようにズルズルとしゃがんだ。
高彦の部屋の窓からこぼれる光をじっと見つめた。
『我慢してないで言えよ』
窓からの光がゆがむ。
勝手に大粒の涙がぽろぽろと出てくる。
止まる様子はない。
…今日はもう寝よう。
ココは危険だ、高彦の『優しさ』に触れてしまう。
また、あの苦しい気持ちになって痛い目にあう。
その場を去ろうとする私を
高彦は待ってくれなかった。
「強くなって、守ってやるから!
あの時みたいに、笑顔の北条にしてやるから!」
「…ッ!」
もう我慢できなかった。
『勝手に』涙が出るんじゃなくて
意識して出してしまう。
高彦の言葉ひとつひとつが糸になって
私の心を締め付けるようだった。
とても痛い、苦しい。
…
誰にも気付かれないように
ゆっくり歩いて自分の部屋についた。
それでも涙は止まらない。
布団の中にもぐった。
ぬくぬくとしていて、私を守ってくれるようだった。
それでもさっきの出来事を思い出してしまう。
掛け布団を力強く握った。
夜はどんどん深い闇色に染まって行く。