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Re: 僕等の図書館 〜1話目UP〜 ( No.19 )
日時: 2010/10/11 20:06
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: gb5AkW7o)

参照200突破記念に、また、館長が本を買ってきてくれました。
いや、正確には、"館長が"では、ないですね。

そういえば、話は変わりますが、この図書館に新しい従業員が来てくれたんです。
名前は、ガンコナーと言ってました。
……この名前を聞いて、ピンとくる人もいるでしょう。
今回の本はその、ガンコナー君の仲間の話が書かれています。


ある山の中で、一人の少女が木陰に座っていました。
少女の前には一面の花畑があり、空は青く澄んでいて、少女は上機嫌でした。
春風に揺れる色とりどりの花を見て、少女は幸せそうに微笑み、目を閉じました。


「ねぇ、君!」

誰かが必死に少女を揺さぶります。
少女はビックリして、目を開けました。
目を開けると、目の前にはハンサムな男性がいました。

「……あ、やっと起きたんだね」

男性はそう言って、やわらかく微笑みました。
少女はコクリと頷きながら、キョロキョロと辺りを見回します。
辺りは真っ暗で、空には白く輝く月が昇っています。
少女は夜まで寝てしまったようです。
少女は慌てて立ち上がました。

「あの、起こしてくれてありがとうございました。それでは」

少女が礼を言うと、男性は人の良さそうな笑みを浮かべ、少女が駆け足で帰ろうとすると、男性は少女を引きとめました。

「ちょっと待ちなよ」

少女は立ち止り、男性を見つめます。

「夜道を女の子一人で、というのは危険だよ。よかったら、僕がお供するよ」

男性は甘い声で、そう言いました。
少女は断る理由も見つからないので、じゃあ、と、男性とともに家に帰ることにしました。

男性は自分のとなりで、ドゥーディーン口に咥えて歩いています。
少女も男性のとなりをただ歩いています。

「そういえば、君、なんであんなところにいたんだい?」

男性は少女に、先ほどの様な甘い、溶けるような声で質問してきます。
少女は男性のとろけるような声に聞き惚れながらも、質問に答えました。

「私、この森に薪を取りに来たんです。籠がいっぱいになったので、休もうと思って、あの花畑に行ったんです」

少女はそう言って、男性の目をチラリとみます。
男性は少女の視線に気づき、ニコリ。と、爽やかに笑いました。
少女は白い頬をピンクに染めながら、慌てて眼をそらしました。
……まぁ、なんといいますか。あれです。一目惚れ、という物です。
少女の今の状態は、まさにそのような感じでした。

その後、男性は少女を家に送り届けましたが、男性はニ度と少女の前に姿を現しませんでした。
少女は白い衣装を織りながら、男性の事を頭に思い浮かべては、ため息をつく。というようなありさまでした。
食事もいらず、睡眠もとらず、ただ、白い衣装を織理ながら、男性のことを考えていました。
そんな生活が何日も続き、少女は衰弱し、男性に恋い焦がれながら、自分で織った白い衣装を着て死んでゆきました。


……まぁ、こんなお話です。
ついでに、この男性が、ガンコナー君の仲間なんです。
ガンコナー。原義は『愛を語る者』
アイルランドの妖精で、ハンサムな容姿をした男性の妖精です。
ガンコナーを好きになった女性は、死んでしまうといいます。
この本に出てきた少女のように、死装束を織ったりして、最後には恋煩いで死んでしまうのです。
……この本の内容は、甘い恋愛とも、悲恋ともいえないような内容でしたが、結局、後味は悪いですね。

もしかしたら、ここの従業員のガンコナー君も、女性を無意識に殺してしまうのでしょうか。
死んでしまった少女も可哀そうですが、ガンコナーとして生まれ、たくさんの女性を殺したくなくても殺してしまう彼。
結局は、どちらも可哀そうなのでしょうね。