ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕等の図書館 〜2話目UP〜 ( No.29 )
- 日時: 2010/10/12 20:38
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: XMOub5JC)
さて、今度の物語は、百物語をするときに読んだ、この図書館にもとからある12冊の本の中の1冊の話です。
みなさん、運命の赤い糸は御存じですか?
運命の赤い糸は人々の小指に結び付けてあって、その糸は自分が将来恋仲になる『運命の人』の小指に結び付けてあるそうです。
今回は、そんな赤い糸のお話です。
あるところに、とても仲がいい少女と少年がいました。
少女と少年はよく一緒に遊んだり、本を読んだり、散歩をしたりと、お互いがお互いのことを好いていました。
ですが、数日後、少女が高熱を出して倒れてしまいました。
少年は急いで少女の家に駆けつけ、少女の部屋のドアを勢いよく開けました。
ベッドには、白い肌をさらにおしろいで白く塗ったような顔の少女がいました。
近寄って少女の頬に触れてみると、頬は信じがたいほど冷たく、頬には一筋の涙の跡がありました。
それから、少年は1人で遊ぶことが多くなりました。
ボールを蹴ったり、木陰で昼寝をしたり、花畑で少女の墓に供える花を摘むたびに、少女のことを思い出します。
そのたび、何故自分は彼女が死ぬ前に元気づけたりできなかったのだろうと悔やみます。
そんなある日のことでした。
少年がいつものように花を摘み、少女の墓へとどけに行こうとしていた時のことです。
車が通っている道路の横断歩道の前で、早く少女の墓へ行こうと思いながらも、信号の色が変わるのを待っていました。
その時のことです。
車が凄いスピードで行ったり来たりする道路に、少女が立っているのです。
少女の容姿は肌が白く、相も変わらず美しく、声も高く綺麗なままでした。
ですが、少女は数か月前に死んだはずです。
なのに、どうしてこのような場所にいるのでしょう。
少年がそう思っていると、少女が生きていた時の様な綺麗な声で、少年の名を呼びました。
少年は少女の声に聞き惚れながらも、首を左右に振って、少女は死んだという事実を思い出そうとします。
そんな少年の心境を知らずに、少女は少年の名を呼びます。
名を呼ばれるたびに、嬉しくて。でも、悲しくて。
少女の空色の青い目を見ては、これは夢だと否定しながらも、心のどこかで、希望を抱き。
少女の金色の髪と白いワンピースが風に揺れるたびに、美しい思い出を蘇らせて。
少年は、しばらくそこで立っていました。
少女はもう何を言っても駄目だと思ったのか、自分の右手をグイッと後ろに引きました。
少女が右手を後ろに引くと、少年の左手が引っ張られます。
少年は見えない力で引き寄せられ、少女にぶつかってしまいました。
少年は我慢が出来ずに、少女を力いっぱい抱きしめました。
その瞬間。ほんの一瞬の出来事でした。
車のブレーキの音とともに、嫌な音がしました。
そう、人の骨が折れるような。
少年は頭から血を流しながらも、少女を抱きしめたままでした。
ですが、他の人から見たら、少年が一人で死んでいて、辺りに花が散らばっていただけです。
少年の左手の小指には、血でぬれた細い糸の様なものが結び付けてあったそうです。
この話は、解釈によっては幸福とも不幸とも呼べる話です。
少年は少女を抱きしめたまま死にました。それが、幸せかどうかは解りません。
ですが、少女が少年を意図的に殺そうと思い、愛情と一緒に悪意を持って接していたのなら、少し残念な終わり方の気もします。
これで、運命の赤い糸の話は終わりです。