ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕等の図書館 〜2話目UP〜 ( No.35 )
- 日時: 2010/12/15 06:53
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: XOYU4uQv)
さて、今度は何の話をしますかねぇ。
……こんどは、要君が話してくれた話を読みましょう。
これは、ある雨の日のことでした。
要君が傘を持って、学校を出ます。
学校を出ると、雨が降っていて、石や土に水がしみ込んでいました。
要君は傘をさしながら、学校の門を出て、歩いて行きました。
要君はスニーカーを雨水で濡らし、家へ歩いていきます。
ザッ ザッ ザッ
少し、砂の付いたスニーカーから、出る足音。
ザッ ザッ ザッ
ペタ ペタ ペタ
?
あれ? 足音が一つ多い?
雨音に交じり、素足で歩くような音が聞こえます。そして、地面を踏んだ時に雨水が飛ぶ音も聞こえない、晴れた時の地面を歩く足音です。
要君はそう思い、立ち止り、先ほどの音が何か確かめようとします。
ですが、先ほどの様な足音はせず、ただ、雨が地面を打ち付ける音と、傘が雨水をはじく音が聞こえます。
要君は先ほどの足音は気のせいだと思い、また歩き出しました。
ザッ ザッ ザッ
ペタ ペタ ペタ
やっぱり、ついてくる。
学校の七不思議にもこの様なものがあったが、いざ自分が体験すると、なかなか怖い。
これで冷静な状態でいられるのは、ベリアルくらいだろう。
要君はそう思いながら、また歩きます。
ザッ ザッ ザッ
ペタ ペタ ペタ ペタ
あれ?
足音が増えている?
そう思いながら、恐る恐る後ろを向いてみる。
でも、そこには誰もいない。ただ、雨が地面に向かって落ちて行くだけ。
……もっと、早く帰れるようにしよう。
要君はそう思いながら、速足で歩きだします。
ザッザッザッザッザッ
ペタペタペタペタペタペタ
足音が歩くごとに一つ多くなっている気がした。
振り向いても、誰もいない。なのに、追いかけてくる。
要君は駆け足で、足音が追いつけないよう家まで駆けてゆきます。
タタタタタタタタッ
ペタペタペタペタペタペタペタ
また、足音が増える。
要君はペースを落とさず、駆け足で帰る。
そのたびに、足音は多くなる。
いつも陽気な要君も、流石に気味が悪いと思ったらしく、全力で家まで走ります。
タタタタタタタタタッ
ペタペタペタペタペタペタ
要君は足は速いし、足が長いので歩幅も広いし、ペースを落とさず走っています。
普通の相手ならこれで一気に離せるはずですが、こんかいは違いました。
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ
足音はまた多くなっていて、しかも、先ほど大きく聞こえてきます。
つまり、こういうことです。
足音はだんだん要君に近づいているんです。
「な、んなんだよッ!」
要君はそう言って、家まで走ります。
もう少しで家に着きます。でも、それより先につかまったら?
いいや、そんなことはない。あってたまるか!
要君はそう思いながら、走ります。
タタタタタタタタッ
ペタペタペタペタペタペタ
ザッ ザッ ザッ
今度は、足音が三つ。
タタタッ
タタタッ
素足で歩くような足音は、もうしませんでした。
後ろを向くと、学生服を着た、金髪の美しい少年、ベリアルがいました。
「要さん、やっと止まってくれましたね」
ベリアル君がため息をつきながらそう言う。
ベリアル君は、要君が割烹着を忘れたので、それをとどけに来たらしいのですが、要君が突然走りだすので、自分も学校から全力で走ってきたそうです。
要君は自分が走っているときに、自分の後ろに何か見えたかと聞きました。
ベリアル君は少し考えるようなしぐさをし、答えました。
「目には見えませんでした。ですが、何かよからぬ者がいましたね」
ベリアル君の答えを聞き、要君は震えあがりました。
あの時、ベリアル君がこなかったら、要君はどうなっていたのでしょう。
皆様も、一人で帰る日は、十分気をつけて。