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Re: 僕等の図書館 〜2話目UP〜 ( No.36 )
日時: 2010/10/14 20:18
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: k5lEWJEs)

さて、次の話は、百鬼夜行の1匹の霊の話です。
皆様、呪いの種類はいくつか知っていますか?
呪詛、魔術、色々あります。そのなかに人に憑く霊のようなものもいます。
今回は、その『憑き物』の話をします。

これは、尚君が聞いた話だそうです。
尚君のクラスで、ある男の子、I君がいました。
I君は友達が尚君しかいませんでした。いつも、人に虐められていて、そこを尚君が助ける。という流れで友達になったのです。

ある日のことです。I君3人の男の子達が石を投げました。
I君は傷だらけです。尚君がそれを見て、男子3人の膝を軽く蹴ります。
3人はバランスを崩し、転びながら、尚君を口汚く罵り、逃げて行きました。
尚君はため息をつきながら、I君に手を差し伸べます。
I君はその手を取り、立ち上がります。
I君は濁った眼をしていて、俯いたままです。

「おい、大丈夫か?」

尚君が声をかけると、I君はこくりと頷きます。
尚君は俯くI君の手を引き、鞄を取りに、2人で教室に行きました。
教室に行き、カバンを取り、玄関まで走ってゆきます。
色々なクラスから、小さな声で何か言われています。
2人とも、このようなことには慣れているらしく、気にする様子はありません。

「I、傷、大丈夫か? 石、目にあたったりしなかったか?」
「うん、大丈夫。いつも悪いね」

尚君の問いに、I君は苦笑してそう答えました。
玄関で靴を取ると、I君の靴に砂が入っています。
I君は靴に入った砂を尚君に頼んで、花壇に捨ててもらってから靴をはき、2人で帰りました。


次の日のことです。
I君に石をぶつけた3人が、高熱を出して病院に運ばれました。
先生達は皆にマスクを持ってくるよう告げました。
I君はマスクを持ってきたのですが、ある女の子に取られてしまいました。

「返して、返してよ!」

I君はマスクを取り返そうとマスクに手を伸ばしますが、そのたびに女の子は、マスクを後ろに隠したり、他の生徒に渡してニヤニヤと笑っています。
尚君はその女の子を注意し、マスクをひったくり、I君に渡しました。


その次の日。女の子が高熱を出し、病院に運ばれました。
そして、石をぶつけた3人は、死んでしまいました。

「不思議だな。お前を虐める奴が、熱を出して病院に運ばれてる。天罰か何かか?」

尚君が弁当のふたを開けながら、そう言います。
I君は尚君と机をぴったりとくっつけ、弁当のふたを開けます。

「あぁ、あれね。……天罰、とかじゃないんだよね」

尚君はI君の答えに疑問を持ちながらも、自分の弁当にある卵焼きをI君の弁当のふたに移します。
これ、好きなんだろ? と、微笑む尚君をみて、I君も笑いながら話を続けます。

「あのさ、犬神って知ってる?」
「犬神……って、犬神憑きとかの、アレか?」
「そう。僕、アレを作ったんだ。犬を埋めて、餓死寸前になったら首を切って、人の多く通るとこに埋めた。あいつ等に、復讐するためにね!」

I君は尚君の耳元で、小さな声で囁いた。
尚君はビックリしながら、ミニトマトを口に運んだ。


次の日。I君が高熱を出しました。
女の子は、死にました。


犬神。
犬神は自分を作った主人の意志に従い、他の人につきます。
ですが、主人への忠誠心が強いわけではないのです。
犬神の扱いをぞんざいにすると、容赦なく、主人にも牙をむくのです。
つまり、I君は犬神をぞんざいに扱ったせいで、このような結果になってしまったのです。
人を呪わば穴二つ。まさに、この言葉が当てはまります。

皆様は、人をのろったりしたりしてはいけませんよ。
人を呪った場合、その呪いは自分にも帰ってくるのですからね。