ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕等の図書館 〜従業員募集〜 ( No.49 )
日時: 2011/03/06 16:54
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: CSxMVp1E)

……さて、今回はどの本を読んで聞かせましょうか。

あぁ、これがいいですかね。


皆様は、キリスト教の事は知っていますか?
聖母マリア様、救世主であるイエス様、そして、何人もの天使を従える神、ヤハウェ様。
キリスト教と言えば、昔は魔女狩りというものがありましたね。
魔女は、ほとんどは、人にねたまれるような美貌を持った人や、誰かに恨まれるような人です。
その人が魔女かどうかは、裁判で解るものです。
ですが、その裁判は、魔女と呼ばれる人にとっては、圧倒的に不利なものでした。


魔女。

そんな名前を持つ人は、今でもいました。
その少女は、人を見るたびに、いつも、その人の未来が見えるのです。
少女は幼い頃、自分が見た未来を、ある少年に話しました。
その直後、少女の言ったことが、本当に起こったのです。
少年は、まぐれか何かだと思っていたのですが、少女の言うことがあまりにも的確で、それでいて、いつもいつもあたるのです。


『気味が悪い』


いつしか、少女の周りにいたひとは、口々にそう言って、少女を避けました。

少女はホロホロと涙を流しながら、家に帰っては、母親に買ってもらった十字架を両手で握りしめ、涙を流しながら、髪に祈りました。
少女は母に貰った聖書を声に出して読みながら、顔をくしゃくしゃにゆがめます。

なんで、みんなは私のことを嫌うの?

少女はそう思いながら、いつもいつも必死に祈ります。

そして、今日も少女は、ある少年の未来を見ました。
その少年が、石につまづいて転ぶ。そんな、小さな小さな未来。
でも、私が言ってあげないと、この少年は転んでしまうんじゃないか?
少女はそう思い、少年に話しかけようとしました。
しかし、少年は少女が近づいてくるのを見て、少女にとても残酷な言葉を投げつけます。

『こっちに来るな。お前に何か言われたら、その通りになるじゃないか』

少年はそう言って、少女を鋭くえぐるような視線を浴びせかけます。
少女はその視線に耐え切れずに、思わずすすり泣きました。


その時です。
どこからか、耳障りの悪い音が聞こえてきます。

パリン。

先ほどまでなんともなかった窓ガラスは、粉々に砕け散り、パラパラッと床に落ちます。
少女や、少女のクラスメートは、茫然としてそれを見ていました。

そして、少女達の目に映ったものは……。


青白く光る、化け物じみた何かでした。
青く光る、鋭い目が五個あり、口、鼻、耳はない。
胴体も下半身もなく、あるのは、鋭く渦巻く青白い光と、それと同化した五個の目。
そして、それの隣には、白い服を着た、美しい男性。
金色の髪は短く、少し癖がついています。目は澄んだ青で、肌は白く、背が高い。
そして、堂々とした雰囲気は、とてもその男性に会ったいて、輝くばかりに美しいものでした。

化け物のようなものは、高く鋭い声で、何か叫びました。
その声は頭まで響き、頭が揺さぶられるような感じがします。
少女が驚きながらそれを見ていると、金髪の男性が少女の耳をふさぎ、無表情でそれを見ていました。

化け物のようなものの叫びを聞いたクラスメートは、魂のない抜け殻のような目をしながら、泣き、喚き、頭を抱えるといった始末で、手がつけられません。
少女はそんなクラスメートを見て、そばに駆け寄ろうとしました。

『駄目だ。あの者達には罰を与えなくてはならない』

化け物の叫び声と、きっちり塞がれた耳に、金髪の男性の低い声が、すうっと入ってきた。
その声は、他の音をかきわけるものではなく、とても静かで、まるで他の音を消し去っているようなものだった。
少女は不思議そうな眼で、男性を見つめます。

『貴方は、我が主、ヤハウェ様の崇拝者であり、主に気に入られた人間でもある。主は、自分の崇拝者を傷つける者は、許さないのだ』

男性はそう言って、悲しそうに微笑みながら、つけくわえた。

『崇拝者を傷つけた者には、いかなる理由でも、罰が必要なんだよ』


さて、お楽しみいただけたでしょうか。

天使とは、この本に書かれたように、化け物じみた姿で現れます。
下級の天使は化け物じみていて、地球外の生物の様だとされています。
この本に登場した男性は、織天使という、とても高い身分の天使であり、高い身分の天使は人間のような姿をしているとされています。

キリスト教の世界には、反逆罪を犯したものが落とされる地獄があります。
反逆罪はキリスト教にとって、一番の罪なのです。

たとえ、反逆の理由が、いかなるものであろうとも……。