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Re: 僕等の図書館 〜百物語編〜 ( No.5 )
日時: 2010/12/15 06:58
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: XOYU4uQv)

これは、幽美君の友達が体験した話だそうです。

ある日、幽美君に勧められ、幽美君の友達が来ました。
友達の名前は、S君にしておきましょう。
S君は、夜7時にこの図書館に来ました。
この図書館には本が百冊しかないし、本棚も一つしかありません。
この図書館では、館長はめったに顔を見せないし、僕はカウンターにただ座っているか、外出して館長しかいない、という状態がよくありがちですね。

S君は、本棚の本を10冊読み終えました。
気がつくと、時計の針は10時を指しています。
図書館の本棚が並ぶ広場は明かりで照らされていますが、廊下は真っ暗です。
S君は、何故この空間だけが暗いのかと疑問に思いながらも、自分の家に帰ろうと、廊下へ歩いて行きました。
廊下は暗く、何処に何があるか解らないので、S君はカウンターに置いてあった懐中電灯を持って廊下を歩いて行きました。
S君が出口を探すため、廊下にある道案内板を見ていると、誰かの足音が聞こえてきました。
足音はどんどん近付いてきて、急に止まりました。
S君が不思議に思って、周囲を見回すと、誰かの顔が懐中電灯の光で照らされました。
S君と誰かは、びっくりして後ろへ飛びのきました。

だいぶ落ち着いてきたS君は、自分の前にいる誰かの顔を懐中電灯で照らします。
その人は顔はおしろいで塗ったように白く、黒い髪に黒い目、そして血のように紅い唇をした男性でした。
S君はほっとして、力が抜けてしまいました。
S君は、男性に出口はどこか尋ねました。
男性はニコリと笑って、S君を連れて出口に向かいました。

出口に向かったはずでした。
ですが、一向に出口が見えません。
廊下がとても長く感じられます。
その時、後ろから何かの鳴き声が聞こえてきました。
男性とS君がバッと後ろを向くと、2人の目には信じがたいものが映りました。

牛の頭をし、両腕に鋭いかぎづめのを持った怪物が追いかけてくるのです。
怪物はかぎづめを使って、廊下をはいずります。
S君と男性は悲鳴を上げて、全力で逃げだしました。
しかし、怪物も2人に負けぬ速さで追いかけてきます。
しばらく走っていると、廊下の突き当たりに来ました。
横に道はなく、あるのはプレートになにもかかっていない、ドアのみ。
男性はドアを開け、S君を部屋の中に引っ張り込み、2人で部屋の隅で隠れていました。
S君が震えながら部屋の中を見回すと、その部屋の壁に赤い字でこう書かれていました


『ようこそ』

S君はそれを見て、男性にしがみつきました。
S君が男性の顔を見ると、男性は口端をつりあげて、にたりと笑いました。

その後のことは、S君は何も覚えていなかったそうです。
S君はいつの間にかカウンターの前に倒れていて、私と幽美君がS君を発見しました。


さて、ここで疑問がいくつか浮かびます。
まず、この図書館に、私も館長もいないのに、何故電気がついたかということです。
電気を入れるためのスイッチは、私と館長しか知りません。では、誰が電気をつけたのでしょう?
2つ目は、男性のことです。
男性は、何故この図書館にいたのでしょう?
私達は、外出する時には必ず鍵をかけます。なら、男性は何処からこの図書館に入ってきたのでしょうか?
この図書館には私と館長しか、働いている人はいないのに。
では、男性は何者なのでしょうか?
最後に、怪物のことです。
あの怪物はわいらと言って、館長のペットです。
館長はわいらをある部屋で鎖につなげて飼っているのに、わいらはなぜ脱走できたのでしょう?


その原因はいまだに解りません。