ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕等の図書館 〜従業員(語り手)募集〜 ( No.55 )
日時: 2010/12/16 21:34
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: 3YwmDpNV)

さて、今回の話は『ストーカー』という、結構凄い人について。
ストーカー。あの人たちは凄いと思います。
愛のためなら、犯罪も犯すという、その、純粋なのかそれともその逆かわからないような……。
今回は、その『ストーカー』についてですね!


これは、湊君の友達の話だそうです。
湊君の友達は、とても友達が多く、気さくで、人がよく、誰にでも好かれました。
湊君の友達の名前は、仮に、H君といておきましょう。
そのH君の近くにいるうちに、湊君はあることに気がつきました。


……あれ?


誰かが、こっちを見てる?

湊君はそう思って、H君にそのことを話しました。
H君はそれを聞き、あたりを見回します。
すると、二人の目に留まったのは、髪の長い、眼鏡をかけた女子生徒。

H君は、気のせいか何かだといい、湊君と一緒に帰りました。


女子生徒が異常だと気がついたのは、三日後のことでした。

H君が何処にいても、何をしても、女子生徒が必ずH君を見ていることに気がついたのです。
H君は日に日にやつれてきて、明るい笑顔も弱々しくなってしまいました。
湊君はそんなH君を見て、心配することしかできませんでした。


湊君とH君は、その日も一緒に帰りました。


ちょうど、湊君の家の近くのゴミ捨て場のところまで来たときです。
突然、女子生徒が湊君へ突進してきます。
湊君は驚きながらも、H君の腕を引き、左に避けます。
すると、女子生徒は足を止め、小さく舌打ちをしました。

その女子生徒の手には、小さな果物ナイフ。

「……あの、どうしたの? 君」

湊君は恐る恐る、女子生徒にそう問いました。
女子生徒が顔は顔を上げると、気味の悪い笑みを浮かべました。

「あなた、邪魔なの」


「……は?」

湊君は、女子生徒の答えに戸惑いながらも、もう一度その言葉を確認します。

「あなた、邪魔なのよ。なんで、いつもH君と一緒にいるのよ。H君だって、あなたと一緒なんて嫌なはずだわ。


 H君は、私だけの大切な人なの」

そう言った女子生徒は、気がふれたように笑いました。
湊君とH君は、それを見て顔を青くしました。

「だから、あなたにはいなくなってもらいたいの。いいでしょ? H君!!!」

女子生徒は瞬きもせずにそう言い、湊君に向かって、突進します。


その時、H君がとっさに前に出て、女子生徒を殴りつけました。
女子生徒は必死にもがきます。その目は、湊君だけを見つめていました。
H君は、女子生徒の手にあるナイフを取り上げ、ナイフを女子生徒の胸につきさしました。

女子生徒は、悲鳴を上げようとしました。ですが、H君が自分の手を女子生徒に噛ませて、悲鳴を出せないようにします。

「いいわけ、ないだろ」

H君は肩で息をして、小刻みに震えながらもそう言います。

「湊は、俺の大事な友達だ。友達を目の前で見殺しにする奴なんて、この世にはいねぇよ」

H君はそう言って、弱々しく、皮肉のこもった笑みを浮かべます。

その時です。女子生徒が苦しそうに口を開きます。

「……あ、りが……とう」

湊君とH君は、女子生徒の言っている言葉の意味が解りませんでした。
ですが、女子生徒が完全に喋れなくなった時、女子生徒の声がはっきりと二人の頭に響きました。

『ありがとう、湊。あなたのおかげで、私はH君にずうっと憑いていることができるわ。
 ありがとう、H君。私を殺してくれて、ありがとう』






さて、この話はいかがでしたか?
……ストーカー。それって、究極の愛ともいえるんですけど、されてる方からしたら、どうなんでしょう?
その人は、いつか耐え切れなくなるでしょうね。どちらかが、消えなければいけないんです。
『ストーカー』か『被害者』か。どちらかがいなければ、どちらかは生きながらえます。

……しかし、それは本当にいい選択とも、言えないですね。