ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Vampire Tear-孤独の君主-【オリキャラ募集中!】 ( No.21 )
日時: 2010/02/13 16:40
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

rightさんのオリキャラ登場です。詳しくは>>13

Episode10‐高き志をもつその女性‐


「いいか。樹亜は凶暴かつ残虐な性格の持ち主だ。警戒レベルを+Aに上げる」
ジャックは樹亜の指名手配写真を兵士全員に配る。
「見つけた場合は生け捕りにすること。抵抗するようなら麻酔銃を使っても構わない。
 法律どおりに<裁判>にかけなければならないからな、間違っても殺すなよ」
「「「「「「「「了解しました!!」」」」」」」」
掛け声を後に、兵士達はそれぞれの持ち場に戻っていく。
「ジャック。裁判・・・とは何ですか?」
「ん?ああ、リザはEUの人民だからアリエスタの法律を知らないのか」
リザが頷いたのを見てジャックは説明を始める。
「アリエスタは混血種とはいえ、有罪無罪の判決を下す裁判を行うんだ。
 ・・・といっても、裁かれた混血種の中に無罪となった奴は見たことないがな」
ジャックは腕を組んで溜め息をつく。
「裁判官は人間だからな。混血種に恨みを持ってる。滅多に無罪なんて見られたものじゃないさ」
リザは目を瞑り、息と共に言葉を吐く。
「・・・遥か昔から築き上げられた罪は、そう簡単には消えないんですね」
その言葉に反応したかのように、後ろから声が聞こえた。
「だろうな。混血種が人間に対して行ってきた悪行はそう簡単に消せるものではないさ」
リザの後ろにはジャックと同じくらいの年齢の女性が立っていた。
栗色のロングヘアーと瞳が美しい、凛とした雰囲気を醸し出す。
「・・・貴方は?」 「私のことならジャックが知っている」
そう言って女性はジャックに指を指す。
「・・・ぇえ・・・と。彼女はレイ・ヴァントと言って、軍でも1・2を争う頭脳の持ち主だ」
「・・・何で冷や汗掻いてるんですか」
女性、レイを紹介しているジャックの顔は青い。
「どうしたジャック。顔が馬鹿丸出しになっているぞ?」
レイはくつり、と笑いながらジャックを挑発する。
「お前が戦場に出ないから、俺の仕事が十倍に膨れ上がったんじゃないか。
 ・・・トラウマで俺はお前を見るたびに胃の調子が悪くなるんだよ」
ジャックが腹をさする。それを見たレイは眉間に皺を寄せ、少し怒ったように言う。
「当たり前だ。私は、戦うためにここに来たんじゃない」
「じゃあ何で軍属してるんだよ!!」
ジャックの質問に鼻で笑いながら答える。
「私は世界の変わる瞬間が見たいんだよ。エリーゼ陛下の造る世界がな」
ふふっ、と笑い手を振りながらどこかへと行ってしまった。
「・・・変わった方ですね」 「だろう?全く、兵士としてアレはどうなんだ?」
ジャックがいたた、と腹をさする。それを見てリザは深く溜め息を吐く。
「そういう意味ではないのですが・・・」
リザが腰に手を当てて、レイの消えて行った方をじっと見つめていた。