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Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.4 )
日時: 2010/02/03 16:03
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode4‐最強の騎士‐


「ではお兄様。リザさんに騎士服と何か装着品を差し上げてください。
 リザさんはそのままお兄様と一緒にEU中央地域に派遣させていただきます」
「「イエス・マイロード」」
ジャックとリザは掛け声を上げ、その場を去る。
「・・・・・」 「?俺の顔に何か付いているか?」
「貴方、皇帝陛下の兄なんですか?」 「ああ、まあな」
「・・・じゃあ貴方がジャック・ウォン・アリエスタ・・・?」 「ああ。・・・まさか知らなかったのか?」
リザは一瞬キョトンとして、言葉を続ける。
「いえ、ただ陛下とあまりにも似てないと思ったものですから」 「・・・よく言われるよ」
似ていると言える所は確かに少ない。
エリーゼの髪の色は金色、俺は栗色で。向こうは癖っ毛なのに、こっちはストレートで。
唯一同じなのは、翡翠のような瞳を持っているということだけだろうか。
「・・・でも、その髪の色は似合っていると思いますよ」 「!そ、そうか?」
ジャックは照れたように頬を掻く。
「ええ。貴方が金色の髪をしていても気持ち悪いと思うので」 「・・・お前は充分正直だと思うぞ」
などと言っているうちに、目的の場所に着いたようだ。
「じゃあリザ。これに着替えてきてくれ。装備品は後で渡すから」
「・・・覗かないでくださいね」 「!!ばっ、だ、誰が覗くか!!」
それだけ言うとリザは部屋に入って行った。

−それから数十分後−

「・・・・着替え終わりましたよ」 「遅かった・・・な・・・」
出てきたリザに目を奪われた。
自分の純白に金のラインの入り混じる騎士服とは違い、漆黒を主としたソレは彼女によく映えた。
彼女の瞳と同じ群青色のラインが、彼女の体のラインを際立たせている。
「?何ジロジロ見てるんですか」 「い、いや。ほら、次!装着品取りに行くぞ!」 「?はぁ・・・」
武器庫の中に入り、色々と見回る。
「女性の使えるような物は少ないんだが・・・」
ジャックがリザに話しかけるが、リザからの返事は返ってこない。
「?リザ?」 「・・・・・・・・」
リザは武器庫の奥の一本の剣の前に立っていた。
金色の鞘に収まった、美しさを醸し出す剣。
「その剣、誰にも抜けないんだよ。鞘の中で剣が錆びついているんじゃないかって言われているんだ」
ジャックがそういうが、リザは構わず手に取る。
「・・・・・・」
リザが柄を掴み、力を込める。
「!!」 「・・・・・・・・・・」
剣は、いとも簡単に抜けた。
その刃には、錆など微塵も見られず、光を反射してきらめいていた。
「・・・私、これがいいです」 「それか?まあ、お前が言うんなら多分大丈夫だろうが・・・」
ジャックは、自分の鼓動が大きくなるのがわかった。
リザの、剣を携えた姿に、畏怖しているのだ。・・・自分が。
『やっぱり、何かあるな・・・』
最強の騎士の誕生に、ジャックは密やかな確信を持ちつつあった。