ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Vampire Tear−孤独の君主− ( No.9 )
- 日時: 2010/02/06 20:23
- 名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
Episode8‐巡らされた赤い糸‐
「・・・ジャック。貴方は何を迷っているんですか」
リザは買い物から帰ってきたジャックの前に立ち、沈黙を破るようにそう問いかける。
「リザ・・・か。迷う?俺が?・・・そんなこと、あるわけないじゃないか」
自室のベッドに腰掛けて、項垂れているジャック。リザは冷ややかな視線を送りながら続ける。
「私の言葉が、そんなにも貴方の胸を抉りましたか?絶対だと思っていた信念を破壊されて、
そんなにもショックを受けたのですか?」
ジャックはピクリと肩を震わせた。
「・・・図星ですか。とんだ甘ちゃんですね。たったそれだけの覚悟で、戦ってきていたんですか」
その言葉にジャックは反応し、リザ肩を勢いよく掴む。
「黙れ!!お前に何がわかるというんだ!!!俺は、俺は・・・」
自分の幼き頃を思い出す。無力だった、あの頃。
大事な人すら守れず、ただ泣き叫んでいた自分。
「・・・私は、貴方の過去なんて微塵も知りません」
リザはジャックの手を離させながら、答える。
「ただ過去に囚われて生きる貴方なんて、知りたいとも思わない。
・・・過去に囚われて生きるだけなら、きっと、死者にだって出来る。
貴方は、何のためにここに、こうして生きているのですか」
疑問符をつけることなく、問いかける。ジャックの瞳は、揺れている。
「・・・生きることに、意味なんて必要ないと思います。けれど、意義はあるでしょう。
それがわからなければ、貴方はずっと袋小路の中を彷徨わなければいけなくなりますよ」
リザはそれだけ言い、ジャックの部屋から出て行ってしまった。
「生きる・・・意義・・・」
ポツリと言った、その言葉。ジャックは心の奥底から、何かが溢れて出る感覚に襲われた。
「これから、アイツはどうするのだろうな」
静寂の中、響く声は闇に溶ける。
「張り巡らされた無数の運命の糸の内、どの運命を、どんな風に選ぶのだろう・・・。少し楽しみだ」
左の薬指を立てて、微笑みながら見つめる。
「まあ、どんな運命を選ぶにしろ、私には勝てないよ、アリエスタ」
冷酷な笑みを浮かべ、彼の王は嗤う。運命に抗うなど、許さないというように・・・。